空の出会い、空の戦い / 神紀の森の三姉妹 / 知ること、そして諦めること
しゃみさん卓。
ソードワールド2.5のメモ書き、第9-11話。
前回(https://fusetter.com/tw/zxcKeFfJ )
【9話】
・導入:飛空艇
南端の新興国家ハーヴェス王国での冒険を終えた一行は、一度線路を外れサンドキアへ向かう飛空艇の中にいた。
サンドキアは神紀文明時代から浮いているとされる島で、初代ハーヴェス王が建国にあたり啓示を受けた占い師――全てを見通すもの、アテムシス(Atemsis, All-Seeing)の居所とも伝えられる土地だ。
現状、富裕層の道楽であるに等しい飛空艇の代金は往復2,400G。
……であるところ、護衛の冒険者としてであれば半額の1,200Gで乗ることができる。
6レベルの冒険者パーティが乗るともなれば乗客としてはだいぶ安心なわけで、今回は子供を連れて乗った家族もいたようだ。
冒険者に興味津々の小さいお坊ちゃんが話しかけてきたので、冒険譚を聞かせてやることに。
担当はキャラクター性からアット。冒険者+精神で達成値17。
臨場感を感じさせる語りに子供が目を輝かせていると、やってきた父親がお礼にと50Gを握らせてくれる。
「父上、あのお兄ちゃん気絶しても倒れない靴はいてるんだってー!」
去って行く間も、子供はアットから聞いた冒険譚を楽しそうに父親へと話していた。
・情報共有
乗客の相手も一段落したところで、今回の目的について話をすることに。
「そういえば、これからアテムシスに会いに行くって話は2人にしていたっけ」
「聞いてないです……」
「そもそも、どうしてそういう話になったんだ?」
「理由についてはアット、君も無関係じゃないんだけど……まず前提して、僕たち二人の目的について少し話しておきたい。いいよね、イズさん?」
「はい、お願いします」
そうして共有した内容がおおよそ以下。
・人探しのためにキングスレイ鉄鋼共和国内で起きた鉄道事故について調べている。
・その車両に使われていた新型動力、複層世界膜格納型新式魔神炉の原理の創始者とされるのがサンドキアのアテムシスである。
「君に関係あるのはここからだ。当該列車で使用されていた魔神炉というのが、開発担当主任技師の名を冠して『エネディクト型魔神炉』と呼ばれているらしい」
「……何て?」
「エネディクト型魔神炉」
「……」
「興味沸いたかな」
「知ってて黙ってた……?」「まさか、最近知ったんだよ」
そんなやり取りの中、愚断剣が感慨深げにつぶやく。
「アテムシスなあ。姐さん、お変わりないやろか」
「愚断剣、知ってるのか?」
「そりゃ知ってるで、……」
「……」
「うわ~~!」
「うるさい」
冷静に怒るオーレア。
なお、この件は迷宮の大きさ同様「言えない真理」の部類らしく、愚断剣は「……アテムシスに会いに行ったらええ」としか言わなくなった。
話題はそのまま探し人へ。
「そういえば、探してる相手っていうのはどういう人なんだ?」
「フロレンティーン家の御令嬢、ミュレル様という方です。おそらく現在10歳くらいで、ふわふわとした金色の髪に、輝く緑の瞳、そしてどこかにリボンを付けています。天使のようなお方です」
「随分目立つ方みたいなのに、見つかってないんですね……」
「そうなんです……」
「フロ……?」
「件の列車事故で断絶した貴族だよ」
「でも確か、見つかるなんてことがあれば大変なことだって話じゃ……」
「じゃあ、追われてるっていうのもその人を探してるからなのか?」
「そう思ってくれて構わないよ」
「結構危ない橋を渡ってるんだな……」
だいぶ早口のイズ。
推しについて語るオタクみたいだったな。
・戦闘:ジャイアントイーグル
「こんな空の上で起こるアクシデントなんてそうないよな」
「なんでフラグ立てるようなこと言うんですか……」
「ベックが来たかもしれないと思うと、どうしても無事に着きたくて……」
「そうじゃなくても無事に到着してくれないと困るんだよ」
などと言っていると突如、悲鳴のような声が船外から響く。
何かと思い向かってみれば、どうやら幻獣のディーラがジャイアントイーグル2体に襲われているようだった。
ディーラは陰に隠れようと飛空艇の方へ向かってくる。
「こっちに来ます~」
「巻き込まれそうだね……」
船長もやってきて討伐指令が下ったため、一行はジャイアントイーグルと対峙することに。
魔物知識は弱点まで抜いた。
先制値18には勝てなかったためエネミーが先制。
1ラウンド目
イーグル①:急降下攻撃
アットに攻撃〇 打点22
イーグル②:急降下攻撃
イズに攻撃〇 打点21
メル :怒涛の攻陣Ⅰ、①にパラライズミスト
前衛にバーチャルタフネス
アット :キャッツアイ、マッスルベアー
①にスティールブレイド〇
②にディフェンダー〇
イズ :①にロングランス×
オーレア :ウィングフライヤー、魔力撃
①に愚断剣〇 25点とか入る
2ラウンド目
イーグル①:急降下攻撃
オーレアに攻撃〇 毒反撃あり
イーグル②:急降下攻撃
アットに攻撃〇
メル :怒涛の攻陣Ⅰ、②にパラライズミスト、異貌
ウィンドカッター拡大〇/〇
①が落ちる
イズ :②にロングランス〇
アット :②にスティールブレイド×→〇
②にディフェンダー×
オーレア :②にウルフバイト〇
②が落ちる
ディーラは古めかしい魔法文明語でお礼を言うと、「私が幼い頃から大切にしてきた本です」と魔法文明の本をくれた。
アテムシスに会いに行く旨を伝えると「であれば、また会うこともあるかもしれません」とも。
この辺りの渉外担当は言語を習得しているメル。ちなみに本はアットが読むために持って行った。
「力のある魔剣は大きな迷宮を作る、力の弱い魔剣は小さな迷宮を作る。では一番立派な魔剣は、どんな迷宮を作る?」
また先の富裕層が「思い出として息子に持たせてやりたい」と、グリフォンからの戦利品である猛禽の羽根を1000Gで買い取ってくれた。
陽の光に羽根を透かせて瞳を輝かせていた少年の心に、この出来事は末永く残ることだろう。
ついでに大人になって物を知ってから疑問に思ってほしい。
「あの眼帯のお姉さんが攻撃された時に敵が苦しんでたやつ、結局何だったんだろう……」って。
・到着:サンドキア
なにはともあれ無事上陸。ジャイアントイーグルはコックの手でごはんになりました。
シルバーホークは観光産業を維持するための20人程度が暮らすの小さな村で、何もないところに高級ホテルだけ建っているみたいな景観である。
村長兼ホテル支配人曰く、
「お疲れさまでした。ゆっくりしていってくださいね、その分のお代はいただいていますから」
「秘境の方まで見に行っても構いませんが……まあ、帰って来ない人の方が多いですねえ。個人的には不吉な評判ばかり残してほしくはないのですが」
「ところで、皆様はこれからどうなさるおつもりで?」
「俺たちはアテムシスに会いに行くんだ」
「アテムシス? ……あっはっは、いると思ってるんですか!」
「ところで、このタビットを見なかったか? ベック・エネディクトというんだ」
「タビ……タビ、はあ……?」
と言いつつ振ったダイスの出目は5,6。
「そういえば、確か七年ほど前にタビットのお客様がいらしたような……」
そうして引っ張り出してきた帳簿には、ベック・エネディクトの名前があった。
「やっぱりベックもここに来てたんだ……」
「不思議な方でしたねえ。奥地へ向かったまま一週間も帰って来なかったと思ったら、ひょっこり顔を出して」
「何事もなくてようござんしたと声をかけたら、『何事もってことはないよ、大変な収穫だった』って」
そんな話を聞きつつ。
非常食を買い足して、いざサンドキア未開の地へ。
【10話】
・踏破:未開の地
一日にできる探索は2回。
日をまたぐごとに回復と非常食の消費が発生する。
1日目
みらの (10) 風光明媚、踏破度0→3
あやたか(06) 滑落、メルが落ちかけてオーレアに助けてもらった
2日目
ゆら (07) 平坦な道、踏破度3→4
みおな (04) 迷う、踏破度4→3
3日目
みらの (09) 前途洋々、踏破度3→5
あやたか(02)
現れたのはアルボルとエントレット。
「おまえたちも森を燃やすのね、あのドワーフたちみたいに!」
問答無用である。
1ラウンド目
メル :怒涛の攻陣Ⅰ、アルボルにパラライズミスト
前衛にバーチャルタフネス
アット :キャッツアイ、マッスルベアー
アルボルにスティールブレイド〇
アルボルにディフェンダー〇
イズ :チャージ、マッスルベアー、全力攻撃
アルボルにノーマルランス〇 30点入って落とす
オーレア :無駄な森林破壊を避けるために待機
攻撃してこない冒険者たちに戸惑うエントレット。
オーレアの意を汲んだメルが停戦をもちかけたところ、エントレットは背後を警戒しつつアルボルを連れて帰っていった。
置いて行かれたのは2つの苗木(メリア/アルボル)。
オーレアが「私、買い取るので育てていいですか?」と言って引き取った。
「ボッ……ボッ……(大切に育てておくれ、森の友よ)」(遠ざかっていく声)
「なんか言ってます~」
「大切に育ててくれってさ」
エントレットが通った道は樹木が避けて行くため迷うことなく進めるように。
踏破度5→7
4日目
ゆら (07) 平坦な道、踏破度7→8
みおな (05) 時間を無駄にした
5日目
みらの (06) 滑落、今回は誰も落ちてない
あやたか(11) 踏破度8→10
先日のディーラと再会する。
「この先は御案内いたしましょう、ここまで来れば『資格のないものを導いた』としてお叱りを受けることはありませんでしょうから」
「久しぶり。また会えてうれしいよ」
「これは御挨拶が遅れて申し訳ありません、こんな秘境の奥深くまでよくお越しくださいました。それでは、こちらへ」
珍しく地を歩くディーラ。一方、ペガサスに乗って飛ぶルーンフォーク。
そうして一行は、ある巨体の元へ辿り着く。
・邂逅:ヴァンデミエール
魔物知識17でもネイチャーマスターでも分からない生き物がそこにいた。
「分からんの? やっぱり定命の生き物やとそんなもんか~」
「折るか……」
冷静に折ろうとするオーレア。
スフィンクスであるという彼女はこう問いかける。
「このような浮島まで何用ですか? それによっては、私はあなたがたを歓迎できないかもしれません」
アテムシスに訊かねばならないことがある旨を伝えつつ、ディーラも「この方々は、私を助けてくださいました」と擁護してくれた。
遠くからも「ボッ……」という声が聞こえる。
「たしかに、あなたがたは森を焼かず、岩を持ち出さず、ここに住まうものへの経緯を持って進んできましたね。わかりました、我らが祖アテムシスの元へ案内しましょう」
そう言って、どんな動物よりもしなやかな動きで彼女は立ち上がった。
ちなみに余談として卵のことも聞いている。
「おそらく、私のどれかの妹の卵でしょう」
「まだ孵らなそうですか?」
「まだ孵らなそうですね」
「守り刀を遣わしたはずですが」
「ここにおりまっせ、姐さん」
「いるということは、使命を忘れたのですか?」
「いや! いやいや、ようやった結果ここにおるんですって!」
・問答:スフィンクスの遺跡
やがて一行は、岩山を掘り抜いて作ったような大きな遺跡へ辿り着く。
年若いものから貫禄のあるものまで、少なくないスフィンクスが過ごしている中、一際幼いスフィンクスがこちらへ寄ってきた。
「お姉さま、今日のお客様は随分と小さいのね! なんという種族なの?」
「彼らは……大きく括れば『ヒト』の仲間です」
幼い彼女、ブリュメールは肉球の付いた大きな前足でアットをつつきまわす。
「前にもウサギみたいなヒトがきていたような……。これも耳なの?」
「それは帽子だよ」
「小さき者たちをそうつついてはいけませんよ、彼らはとても弱いのです」
そう言ってブリュメールを窘めたのは、最年長と思しき落ち着きのあるスフィンクス。
名をフリメールという彼女は、一行にこう投げかける。
「ここまで来たのは、あなたがたで三組目です」
「何日か前……いえ、ヒトの暦では何十年か前でしたね、この島に来た男が一人。そして7年ほど前、ウサギの顔をした者が一人」
「一人は王になりたいと願い、もう一人は世界を輝かせる文明の灯を望みました」
「アテムシスには会わせましょう。しかしそこで、あなたがたは何を求めるのでしょうか」
最初に答えたのはイズ。
「とある人を探し出すために、複層世界膜格納型新式魔神炉の話を聞きにきました」
「なるほど。誰がどこにいるかであれば、私でも答えることはできますが」
「正直、居場所さえわかれば中身はどうでもいいです」
「少しは興味持とうよ」
「あなたは、それを知って何をするのですか? 少女に出会ったとして、それを弑したいのか、守りたいのか。あるいは彼女の望むままに、何かを為したいのか」
「……私は、ミュレル様の御心のままに」
「であれば、今はまだ知る時ではありません。あなたに、彼女に会って叶えたい望みが出来た時こそ、自ずと出会うことになるでしょう」
次に口を挟んだのがアット。
「誰がどこにいるか分かるのか!?」
その瞳をじっと見つめて、フリメールは静かに問いかける。
「あたたは彼を見つけてどうするのですか?」
「答えてください。その誓いが為せなくなった時、あなたの運命は破綻するでしょう」
「まず、何があったのかを聞きたいんだ。何を為すかは、その結果によってだよ」
「いいえ。知りたければ、答えを」
(運命なんて書き換えちゃえばいいでしゅ~、そのためにボクたちがいるでしゅ!)
「……」
「答えが出ないというのは、あなたに迷いがあるということ」
「……うん。会わない限り、その答えは出せない。ベックに会ってから考え直すよ」
「賢明です」
そう頷いて、フリメールは迷宮の門を開く。
「複層世界膜格納型新式魔神炉については、我が母から直接お話しした方がよいでしょう」
「我が名、フリメールの名において。あなたがたを全てのスフィンクスの祖、母なるアテムシスの元へ送り届けましょう」
とはいえスフィンクスのいる迷宮である。一方、我々のレベルは6だ。
みらの「うーん、嫌だ……」
などと言っていたのでフェローを付けてもらえることに。
「お姉さま、私も久しぶりにお母さまに会いたいわ!」
「ううん……、……わかりました。行ってくるとよいでしょう。ララ、あなたも付いていっておやりなさい」
元気なブリュメール、巻き込まれのララ。
そんなこんなで幼いスフィンクスとディーラの少女諸共、一行は迷宮へと放り込まれるのだった。
【11話】
そこに在るのは常春の世界。
20mほどの高さを大理石の天井が覆い、地には草原が、丘が、川が、森が広がっている。
満ちる空気はどことなく甘く、賢いと分かるがどうやらマナが濃いらしい。
神紀文明時代の大気組成である。この空間で使用される魔法は魔力+2。
非常食の瓶に詰めて持ち帰ろうと言う話になった。
全員で1d3を振り、9本分の空気が集まる。
「ねえ、何をしているの? ヒトって面白いことするのね!」
「ええと、これはピンチになった時に吸うんです」
「全然わからないわ」
「外の世界は、ここと違ってマナが濃くないんだよ」
「そこまではわかったわ、でも何で吸うの?」
ブリュメールから質問責めにされつつ、探索開始へ。
・踏破:常春の迷宮
一日にできる探索は2回。
日をまたぐごとに回復と非常食の消費が発生する。
1日目
みらの (11) 小高い丘、遠くに向かうべき祠を見て踏破度0→3
あやたか(09) 前途洋々、踏破度3→5
2日目
ゆら (05) 謎かけの石板、キメラ作成パズルを解いて踏破度5→6
みおな (04) 平坦な道、踏破度6→7
3日目
みらの (11)
スフィンクスのニヴォーズから天気に関する出題。
解けないまま一日経ったけど古代文字の小石をもらった。
4日目
あやたか(12)
若いスフィンクス、プリュヴィオーズが話しかけてくる。
「人って知らないって本当ですか? 怖くないですか? 目を瞑ったまま歩くようなものですよね?」
「うーん……」
「案外普通に歩いてますよ」
「歩くしかないからね」
彼女は「怖いかもですけど、少しでも明るくなるといいですね!」と言って小石を3つくれた。
踏破度8→10
ゆら (05) 謎かけの石板、数学の問題が解けずに次の午後へ
5日目
みおな (08)
一つの樹に数種の実が成る植物を見つける。どうやら数多ある現存種の祖にあたるものらしい。
この迷宮内でのみ使用可能な非常食を+3、また世界樹の孫の葉を2枚拾った。踏破度10→11
「希少な品種だね」「ううん、無秩序……」
6日目
みらの (08) 世界樹の孫の葉が6枚、踏破度11→12
あやたか(07) 平坦な道、踏破度12→13
7日目
ゆら (05) 謎かけの石板、叙述トリックを見破って踏破度13→15
・問答:アテムシス
太古の様式を思わせる石造りの神殿には、大きなスフィンクスが身体を丸めて眠っていた。
複層世界膜格納型新式魔神炉について尋ねると、彼女は答える。
「その名を付けたのは、あの男であって私ではありません。その話をするために、まずは一つの真理からお教えしましょう」
これをご覧ください、と彼女が示せば、そこには床に一本の魔剣が刺さっていた。
「これは私が作った魔剣、この迷宮を形作るものです。そして、……どうか目を潰されることのないよう」
そう言って開かれた壁の向こうには一本の鏃。
ここで達成値20との精神抵抗が入る。
基本的には精神を灼かれる前提のイベントだが、アットだけ変転を切って耐えた。神の威光に抗いし者。
耐えると好きな能力値に+1、耐えられなかった人は精神力-1と好きな能力値に+2。
(アット生命+1、イズ筋力+2、オーレア知力+2、メル知力+2)
曰く、これは伝令神パロが矢文として放ったものである。
賢神キルヒアがパロに授けたものでもあり、不要となった後にアテムシスが譲り受けたらしい。
この鏃こそ、サンドキアを作り出した魔剣。迷宮の中に作られた迷宮に、我々はいる。
そしてその浮島すら、第一世代の魔剣が作り出した「世界」という迷宮に内包された迷宮に過ぎないのだ。
「アビスは世界を破綻させる、魔神もまた同様です。それらを使った原理では挑戦的な実験を行うことができません。たった一つの失敗が、世界の崩壊につながりかねないからです」
「しかし世界の中に、もうひとつ『壊してもいい世界』を用意してやればどうでしょう。大事を取るなら、またその中にも」
「幾重にも重なる魔剣の迷宮の中であれば、奈落を用いた動力機構も現実的なものとなります。それを、あの男は名付けた――複層世界膜格納型新式魔神炉、と」
以上が世界の真理のひとつであり、複層世界膜格納型新式魔神炉の成り立ちである。
「あの男がどこにいるのか、私には答えることができます。しかし、あなたは決めなければなりません」
「あの男に会って、どうするのか。あなたがその答えを覆せば、それを前提としたあらゆる因果が崩壊する。私はそれを恐れているのです」
「また、私は答えることができます。なぜ、あなたの元にゲートインプが2体いるのかを」
もちろん、ゲートインプ側も好き勝手騒いでいる。
(なぜって、そりゃあそういうもんだからでしゅ~。実際なってるでしゅ?)
(そんなに知りたいなら適当言っときゃいいでしゅ~。運命なんて後からいくらでも捻じ曲げられるでしゅ)
(アイツが勝手に言ってるだけでしゅ~。そんなこと言ってるのアイツだけでしゅよ?)
(はあ~、もう『ベックを殺す』って言っとくのが後々丸いんじゃないしゅか?)
葛藤の末、アットが出した答えは「俺はどんなことがあってもベックを信じるよ」。
まず、ゲートインプの口を通して彼らが2体いる理由が語られる。
(ボクはずーっといたでしゅよ? ただ命じられたから隠れてただけでしゅ)
(自らゲートインプと契約してくれたから、ようやく出てこられたでしゅ~)
(魔神の苗床になると、デーモンルーラ―技能が習得されるでしゅ? その時からでしゅ)
(ベックのこと好きでしゅよね? みんなに自分のことを詳しく話すなって言われたら、伝えられないでしゅよね?)
(当然、絵も上手く描けないでしゅよね~)
「ベックは、だって……小さい頃から一緒にいて……」
(段階を進行させる時間もいくらでもあったでしゅね~)
あやたか諸共絶句するアット、よかったよね。
ちなみにベックが現在「あの村」にいるという話や、村が燃えた日「その原理が成り立つのであれば、複層世界膜格納型新式魔神炉ができるぞ。であれば、材質はそう――イグニタイトだ」とこぼした記憶のフラッシュバックも、ここであったことになっている。
イズの問答はフリメール相手で完結しているため、オーレアからの質問に。
「鉄道事故に関する噂の中に、正しいものはあるんですか」
「――全てです。その全てが正しい」
ちなみに現状、上がっている噂については「当主を亡き者にしようとした何者かが橋に爆薬を仕掛けた」「鉄道の発展を快く思わない勢力、あるいは蛮族の襲撃があった」「バジリスクの偉そうなやつがいっぱい来ていた」などがある。
だんだん他人事じゃなくなってるぞオーレア。
メルは「ここで言うようなことじゃないんだ」と言ったら内心問答にしてもらえた。
みおなは廊下にいたので知らなかったけど、GMの笑い声は部屋の中まで聞こえたらしい。
何を言ったかは「自分のみ」の伏せか何かに残しておきたい。
表向きは「あなたが秘した胸の内を、いつか彼らに伝えることになる日が来ます」みたいなことを言われたよ。
最後にこの世界を作っている魔剣の話を1/100も理解できなかったりしつつ、アテムシスの別れの言葉と共に一行は眠気に襲われる。
「もう会うこともないでしょう。――私も微睡みながら、次の訪問者を待つとしましょう」
目を覚ませば、同行していたブリュメールが姉たちと「お母様には会えましたか?」「ええ、とても眠たそうだったわ!」「いつもどおりですね」などと話している。
どうやら無事に戻って来たらしい。その中にあってさえ、
「知ってしまいましたね――」
スフィンクスの声が、アットの脳内にいつまでも響くのだった。
・次回予告
次の目的地は強者集うマカジャハット王国。
アットがリムーブ・カースを受けるのか、解呪されたらどうなってしまうのかにも注目。