アンナチュラルきっかけでアンナチュラルの職についた人間が解剖チームとしての感想をば。
⚠️映画観てから見てください!⚠️
#ラストマイル
#アンナチュラル
主に解剖シーン、アンナチュラルに特化して感想をば。核心に触れるので、映画観てから読んでくださいね。
まずはじめに、ストライカーいいの使ってる!!UDIお金持ち!!良き!!!!(そこ????)ストライカーは頭(頭蓋骨)を開け脳を取り出すときに使う電動ノコギリです。良いの、というのは、ラストマイルに出てきたストライカーは一見ノコギリ?と分からなかった方もいるかもしれませんが、丸い刃が認識しにくかったと思います。それはなんと!!こちら吸引器がついているんですね!!!ノコギリでお骨を切らせていただく際どうしても細かい骨粉が出てしまいます。それを吸ってくれる優れもの!!すごい!!!!まぁうちはお金ないので吸引器ないタイプを使用しておりますが、、、(解剖中は感染症対策としてN95マスクをしておりそのまんまの粉塵をまともに吸うことはありませんがそれでと骨粉凄くてゴホゴホになっちゃうんですよねぇ…)
いやこいつストライカーだけで何行語っとんねん。
次次!次に参りましょう!
ご遺体1体だけやのにやたら解剖遅いな~?と思ってましたが、なるほどあるあるの焼死体トリックでしたね納得。火事場などで見つかった焼損し炭化高度なご遺体は生前の損傷の有無が一見分かりづらいので(昔は殺した後に火をつければ殺人隠せる!ばれん!と思ったアホがいたんですな)絶対司法解剖するようになっております。そしてあそこまでコゲコゲですと、外陰部から性別の推定が困難になることも。大半は、男性の場合は炭化した陰茎、陰囊が燃え残っていることがあり推定が可能ですが、女性の場合は「外陰部は女性器」なのか「男性器が高度に焼損し無くなってしまっているのか」の2パターンが考えられることになりますよね。まぁそんな事例あまり経験したことはないので世の法医学者は「いや性別はわかるやろ!!!」とツッコんでいそうですが、まぁそこは、ね!!
てかUDIって解剖前にCT撮らないんだっけか。CTとれば女性であれば子宮が見えるので女性だと一発でわかります。
あと、年齢推定ですね。白骨化や高度腐敗などにより身元がわからないご遺体は、もちろん科捜研とかでDNAで最終的には身元を判明させますが(これも近いご家族がおればの話)解剖時に法医学者がある程度の推定年齢を出します。いくつかの方法がありますが、その中のひとつが今回ラストマイルに出てきた「頭蓋の縫合の程度」です。赤ちゃんのときに狭いところを通り産まれてくるため頭が変形できるよう頭蓋骨が少し開いており、大きくなるにつれ閉じていくというのは有名な話だと思います。それが、年をとればとるほどジグソーパズルのピース、骨同士が癒着し、骨と骨の境目が薄れていきます。これがミコトの言っていた「40くらいだと目立たないはずなのにまだ縫合が目立つ!若いのでは?」という「不自然な点」だったというわけです。めっちゃ日常で使うやつだったから親しみが湧いたというか、嬉しかったな〜!わかる!となりました!!(なかなかそのような場面に遭遇することはありませんがね!司法解剖にまわってくる身元不明のご遺体に若い人はそんなにはおりませんので…たくさんいたら問題だよね!そんな社会)
中堂系の「見上げた根性だ」の言葉。あまりにもリアルで鳥肌が立ちました。本職である我々も、このように思う、言ってしまうことがこれまでに何度もあるのです。詳しくは守秘義務がありもちろん申せませんが、度々「並々ならぬ方法で死を選ぶ方」を目にします。「なんて覚悟なんだろう、その熱意を、根性を、生きることには向けられなかったのか」生者の勝手な感想を抱いてしまうことがあります。時たま目にする、なりふり構わず死を選びそれを行動に移した方の壮絶さに、自分らの無力さに打ちひしがれることもあります。だからこそ、それを防止できるよう、我々は寄与、社会に還元せねばなりません。これから頑張ります!映画のエンドロールの最後に書いていたように、我々だけではなく、皆さんも生きやすい世の中をつくっていけるように。そして、どうしようもないときは、誰かを頼ってください。「そういうふうに」思ってしまっているときには、きっとそんな選択肢も頭に浮かばないんだと思う。あ、そちら側にいってしまおうと、ポンと線を越えてしまうんだと思う。そんな人をたくさん見てきました。それでも。生きる価値のない世界でも、それでも、どうにかしてつなぎ留めたい。そう思います。
はたまた映画の話に戻りますが、ある方のふせったー拝見した際「歯科のデータベース!!所長の悲願が進んでいるのか!?」と仰っており、あぁ!そう感じるのかなるほど!となりました。私はかなり実務よりだな〜という感想でした。法歯学者がいるところでは、解剖中に歯科所見(デンタルチャート)を歯医者さんがとり生前のかかりつけの治療痕と一致するかどうかを見る、身元確認の方法の一つになっております。一応歯医者さんでなくとも授業等で習っているはずですので医者、法医学者である中堂さんがああやってデンタルを見ていたのは納得です。てかアンナチュラル最後の2話でもあったもんね!70しゃい!象牙質がろしゅちゅ!!中堂さんも歯科所見とるようになったんやなぁと感慨深い…あの歯科医のおじいちゃんもう引退してそうですもんね笑
UDIの世界では、歯科のデータベース進んでいたらいいな!!ほんと、データベース化出来ればどんなに楽か…でも色々難しいんですよねぇ、とほほ…
あと!!細かいこといってもしゃあないけど!!リアルよりのツッコミさせてください!!納体袋まだご遺体触れてないから綺麗なんだとしても素手で触らない所長!!!!笑
ご遺体は、発見されるまでの経緯がよく分からない方もいらっしゃり、コロナや結核などの感染症にかかっているかもしれない、また解剖するとどうしても血液が出てきます。血液から感染するB型肝炎などの感染症を予防するため、言い方は悪いですが基本的には「不潔(医療的に)」というふうに扱います。なのでアンナチュラルで解剖台で寝てた中堂さん!!!先生!!!!不潔ですやめてください!!!!となるわけです笑
いやぁ、学生の頃にアンナチュラル観て「ご遺体からそんなことがわかるんだ!すごい!」と思っていた私が、いまや解剖に従事させていただいており、こうやって映画を「あるある〜!わかる〜!」と観れる。本当に感慨深いです。
長々と自分語りをしてしまい申し訳ありません。これは個人の見解ですし、ひとつとして同じご遺体はありませんので「これがあったからこの死因はこう!」みたいな単純な世界ではありません。ふーんまぁそんなこともあるのねくらいに思っていただけたらと思います!!間違ってたらすみません!!!ありがとうございました!!!