オキソがなぜあんなにも自分を孤独だと思っているのか、彼にとってローレンシウムはなんなのか、なぜ仲間という関係性にこだわるのかということを追記文章に書いた。後で体裁整えてブログにアップする。驚きの7000文字オーバー。 #舞台サマエル
1回目の鑑賞でラストシーンについて「えっ、そこでその台詞言っちゃうの!?」と思ってモヤモヤして、2回目の鑑賞の途中でオキソにイライラしてきた。
ローレンシウムがあんなにオキソのことを思ってるのに、なんでお前は孤独ぶってるんだ。コミュニケーションを取れ。もっとちゃんと周りを見て!ちゃんとオキソのこと考えてる人いるのに「俺は孤独」とかなんなの!?こじらせ厨二病で童貞マインド積載量オーバーしたみたいな考え方はやめてくれ、自己完結するなよ、他人とキャッチボールをしろキャッチボールを!かっこつけずにもっと自分をさらけ出せよ!!もっと熱くなれよ!!!
オキソに対する現時点での印象は「繊細ぶっててナルシストで自己完結してて、そのくせ妙なところでプライドが高くて周囲に対して勝手に壁を作る童貞力高すぎ厨二病こじらせナード」
…自分を見てるみたいでイライラするのかもしれない。
なんでこんなにイライラするのかなーと考えて、よく考える「自他の境界」とか「他者との断絶」というところにやっぱり行き着いた。
「他者と違うが故に抱える苦悩」みたいなのはきっとあると思う。
http://kansoubn.hatenablog.com/entry/2018/05/10/201013
(「美人がお金持ちを選ぶ理由、若手俳優がファンを選ばない理由」というキャッチーなタイトルをつけてるけど他者との断絶について真面目に書いた記事です)
オキソもローレンシウムも、研究に明け暮れて他人から相手にされないはみ出し者。自分たちをそこに追いやった奴らの鼻を明かすんだと息巻いてたから、所謂カースト上位の人たちに対する羨望や嫉妬はあったと思う。
更にオキソは「天才」。
蔑まれもするけど憧れられたり妬まれたりもきっとする。
ナードという属性で多くの人たちの「仲間に入れない」という「断絶」、
「天才」だから他者に理解されないという「断絶」。
二重の断絶に苦しめられてたんじゃないか。
そりゃわかるんだけど、だからこそ腹がたつ。特に後者。
だって、オキソの側にはローレンシウムがいるから。
なんで彼のことを信じられなかったの?信じようとしなかったの?
結局傷つきたくなくて、自分の心を見せるのが嫌なだけな臆病者じゃん!と腹が立った。
「断絶」というのは自分と相手を地続きの場所に置かずに、分断した場所に据えて相手を「異物」だと認識(無意識に差別を行う)した相手との間に起こることだと思う。
ローレンシウムはオキソを「異物」だと思って無邪気に区別をしたかというと、きっとそうじゃない。天才だと思ってるし魅力があるとも言ってる。だけどローレンシウムはオキソを対等な一人の人間として扱ってたと思う。賞賛することで彼を孤独に追いやってはいない。
(賞賛が人を孤独に追いやることがあるという話はこの辺に書いた http://kansoubn.hatenablog.com/entry/2017/09/19/234418 )
オキソの歌の「光」というのはローレンシウムなのかと思う。
同じ研究者で間近に天才がいたら、きっと普通は妬んだりする。(普通の仕事でもそうだけど)
能力の無さに歯がゆい思いをしたり、努力が足りないのかと自分を責めたり、あいつは特別だからと無理やり諦めようとして、でも割り切れなくて悔しくて…、ってこともあるんじゃないか。
だけどローレンシウムにはそういう描写がない。実は内心そう思っている?と考えたりもしたんだけど、どうもしっくりこない。
彼は本当に、まっすぐ身近な人を好きになったり大事にしたい人なんじゃないかと思う。
メサイアの毒性の話が出た時は妻のクロムの誕生日を祝えないことを謝り、脱獄した後のことを話す時は豊かな暮らしをさせてあげられないことを妻に詫び。
ずっと味方だと恥ずかしげもなくオキソにまっすぐに言うし、自分が知らないことをコバルト・クロリドとオキソが共有していることに友情を裏切られたように感じて怒る。オキソを詰るフェノールに発言を訂正しろと声を荒らげる。
こんなにまっすぐ愛されてるのに、なんでそれを受け取ろうとしないんだよオキソは。
孤独だ孤独だ、誰も自分を理解してくれない…って、なんだそれ。自分で壁を作って自分で勝手に孤独になろうとしてるだけじゃん。
お前は試し行為を繰り返す面倒臭い女かよ…(試し行為の使い方が間違ってる)
自意識過剰な漫画モテキの主人公かよ…
更に、自分は悪魔ってなんだよ…厨二病こじらせすぎかよ…荒ぶる右手を鎮まれと抑え、邪気眼が疼きだすのかよ…
もしかしてローレンシウムが伴侶を得たから拗ねたとかか? という面でも考えてみる。
…いや、だってローレンシウムいい奴だからそりゃ仕方なくないか。主体性はないし気が弱いけどまっすぐで優しいもん。オキソのせいで霞んで見えるけど、頭もいいしお金持ちという属性も持ってる。いや、クロムは性格に惹かれたと思うのだけれど。わたしがなんとかしてあげなくちゃ!みたいな感じで、たぶん。いいなあ、いい奥さんだな…しっかりしてるのにローレンシウムのこと「主人」って言うところはちょっと「おや?」と思ったけど…(そこは「夫」じゃない?と若干モヤった。男女平等的な意味で。でも内助の功的な役どころだからなのかなー)
話が逸れたけど、パートナーの有無でしょんぼりしてるとしたら、セシウムあたりをちょっと口説けばいけるじゃん?ともやもや。
自意識過剰こじらせててそういうのが苦手だったりするのか?それとも「あまりがっついたら嫌だと思われるかもな」とか思ってたりするのかな…ありそう。
め、め、めんどくさい!!他人はお前のことをそんなに色々考えてないよ…! 童貞力が高すぎるよオキソ!!
承認欲求という意味でのパートナーの獲得ではなく、純粋に性的欲求にフォーカスを当てて考えもみる。
オキソはひとりっ子ぽい。そして男系家族で女に変なファンタジーを抱いていそう(ヘテロ前提で話を進めるけど)。
漫画モテキの主人公みたいなメンタリティ(自意識過剰のひとり相撲こじらせ童貞野郎)だったら、風俗とかもいかなさそうだ。「いや、おれはそういうのはいいよ」とかかっこつけて言いそう。めっちゃ興味あるけど興味ないですみたいなポーズをとりそう。取り急ぎお手軽に割り切った関係を持ったりっていうのもできなさそう。「ロマンチックじゃないから」みたいな理由で。心の底で「ありのままのおれを理解してくれる理想の女性が現れるはずだ」とか思ってそう。だからセシウムにもかっこつけて(?)接してるんだとしたら、本当に、心底めんどくさい。
オキソのばか!なにが「ありのままのおれを理解してくれる理想の女性が現れる」だ!!!(※オキソが実際にそう思ってるかどうかはわからないけど、そう思ってる前提で話を進める)
そんな人いません!!!
「ありのまま」の自分を受け入れてくれる人なんていません!!幻想です。
自分だけ安全地帯にいて何も差し出さずにやさしく包み込んでくれるような存在…って、そういうのはママに頼みな!(罵り言葉として「お母さん」を出したけど、真面目な話、母親にすらそれを求めたらアウトだと思う。お母さんはひとりの人間であって「お母さん」という生き物ではないので)
ちゃんと相手を人間として扱ってくれ。他人はお前の人生という名のストーリーの都合がいい脇役じゃない。血の通ったひとりの人間で、その人それぞれが自分が主役の人生を生きているんだ。
成人してるんだから現実を見よう。アナ雪で「ありのままの〜」と歌ってるけど、あれは嫌われるリスクを背負った上で、ありのままの姿をさらけ出す自分を肯定しているからオッケーなのであって、自分だけ傷つかないようにポジション取りして相手には何かを求めるのはアウトだからな…?めっちゃくちゃ童貞マインド溢れてるからな?
というかそんな男前で体格にも恵まれていて、頭が良くてしかもお金持ちなのに、なんでそれを利用しないんだよ!!と思ったけど男前で体格に恵まれているのはspiさんであってオキソではないから(??)、この考え方はちょっとおかしいかもしれない…ちょっと何を言っているかわからなくなってきたけどまあいいや…。
また話が逸れた。孤独とか、ローレンシウムはオキソにとってなんだったの?って話の続き。
監獄のシーン、トリアゾールが「13人の救世主の話を」みたいなことを言ってるとき、オキソは泣きそうな顔をしてたじゃない。(というか右目若干光ってたから泣いてたのかな)
オキソははじめ孤独だった。メサイアの開発によって「世界に復讐をしようとしてた」。(毒性の有無がわかってたかどうかはちょっと置いといて)
世の中の有力者を仲間に引き入れる、これ自体「復讐」とも言える。自分たちをバカにしてたような立場の人が、メサイアに目が眩んで仲間に入るなんて滑稽だから。
オキソはそういう「滑稽な人」が、何を考えてどう動くのかを見たくて、だから監獄でああいう問いかけをしたのかなあ。その結果、皆真摯に向き合い考えた、だから泣きそうになってた…のかなあ。
その涙の意味が贖罪からなのかなんなのかわからないけど。
……そこでですよ。
もしそれが「13人は仲間だ」という気持ちから泣いたんだったら。
オキソにとってローレンシウムってなんなの?という。
ローレンシウムをコケにするのも大概にしろよ!?という怒りが。
仮にカースト下位のコンプレックスをこじらせてて、いけてるカースト上位組がやってるような楽しい感じをやりたかったんだとしたら?という面で考えたらまた腹が立ってきた。
だってさ、秘密組織ってなんなの。意味わかんない。秘密って言いながら秘密じゃないし、ノリが少年だよオキソ!!ところで秘密組織なのにみんなが知ってるってなんなんだ。フリーメイソンみたいなもの…?
オキソ…もしや…ヒーローに憧れていたのでは…!?
「皆に愛される正義の味方」「正義の集団」に憧れて、だからそれをなぞる経験ができたってことで「メサイアは僕を孤独から救ってくれた救世主だった」という発言に繋がるのだとしたら、オキソ!!!お前!!!人が死んどるんやぞ!!!きっとこれからも人が死ぬんやぞ!?
数百人単位じゃない。数千人、悪くしたら万単位の人間がこれから死ぬ。死にはしなくても後遺症が残る可能性が高い。すでに土壌汚染が広がってるから、その土地で作られた作物を食べるのはきっとリスクが高い。となると他国から食料を輸入しなきゃならない(だからコバルト、クロリドは戦争を終わらせようとしてたのかなー)
戦争で利益を得ていた人間も、一次産業で利益を得ていた人間も大打撃だよ。
お前のその身勝手で独りよがりな願望のせいで!!!多くの人間が苦しんでいるんだぞ!!!???ふざけるなよ!?と思った。
あとやっぱりローレンシウムの立場がない。ローレンシウムかわいそう。彼を理解しようとして寄り添っていたローレンシウムひとりより、たくさんの「世界の有力者」たちをオキソは重要視したということだから。
オキソはベンゼン社長の新成分の独占権購入について「幸福の追求について批難するべきではない」みたいなことを言ってた。てことはつまり、「幸福の定量化という観点から話すと」自らの選択も非難されるべきものではないということになる。
だから自分を悪魔だと言っているのか?
だから自分がユグドラシルのトップに立とうとはしなかったのか?
自分の欲求と世界を天秤にかけ、その上でほかの12人のメンバーに問いを投げかけたのか?
だとしたらほんとねじ曲がってる…というか、こじらせまくってるよね。
ここまで考えてて、とある作品を思い出した。
キリスト教、ユダヤ教、臨床心理学、ユング、ニーチェ、社会心理学、科学用語、SFなど多くの要素を盛り込んだ、とある名作ゲームがある。(残念ながら確かリメイクはされてない。PSアーカイブスではプレイできたと思う)。
ネタバレするけど、主人公の恋人と世界中の人命を天秤にかけるというシーンがある。
仲間たちは前者を選んだ。
そこでわたしは「まじか!」と思った。
いや、わかる。
名前も知らないたくさんの人と、一緒に過ごして苦楽を共にしたひとりの人間のどっちを選ぶ?
世界を救ったって、自分たちは英雄になれるわけじゃない。多くの人たちは世界の危機なんて知らずに過ごしてる。
人知れず世界を救ってきて、特にきつい役目を背負った主人公に「もう自分のために戦ってもいいんじゃないか」「私たちも彼女を助けたい」と仲間は言う。
どのみち自分たちの手に世界の行く末は委ねられている。だったら自分たちは今までずっと一緒に戦ってきた彼ら二人を選ぶと仲間は言った。
…まあ見返りがないもんなあ。
ドラクエみたいに勇者として崇められてるわけでもない。死にそうな思いをしながら戦ってる最中も、世の中のたくさんの人は何も知らずに幸せに、あるいは不幸せに日常を過ごしてる。
だったらどちらを選ぶ?って聞かれたら世界全体の幸福なんて投げ捨ててでも、自分の大事なものを選びたくなるよね。
登場人物には恋人や家族や子供がいる人が割と多かったから、自ずとその決断になったのかもしれない。
話をオキソに戻す。
このゲームを思い出して、やっぱりオキソむかつく!とわたしは思った。
「その決断は尊重されるべきだ」とオキソはベンゼン社長に言っていた。
ベンゼンに言うのはわかる。
でも、自分にもそれを適応しちゃいけない。
それをオキソに言っていいのはオキソ以外の人物だと思う。
某ゲームで言えばパーティメンバーという「主人公以外」が決断を尊重したし後押しをした。
だけどサマエルだと話が違う。
オキソは実は、徹頭徹尾自分のことしか考えてなくない?
メサイアを流通させるために会社を作って、ローレンシウムをトップに据えたのはなんで?
「自分のような捻じ曲がった人間がトップに立つと革命が起こりえないから」ってオキソは言ってたけど、それってつまり悪く言えば「革命を起こすという自分の願望のために」ローレンシウムを利用したと取ることもできる。
クロムが「オキソくんはいつだってあなたのことを考えてる」と言ったけれど、オキソがローレンシウムにちゃんと向き合って、彼のことを考えていた描写ってあったっけ…(オキソに腹を立てているので見落としている可能性は高い)
確かに文書の改ざんはしなかった。それを「お前がやるなと言ったからだ」とオキソは言っていた。だけど、それって「ローレンシウムのことを考えて」やったこと…?
いつだってオキソは良くも悪くも自分の「理想」を追求していた。
相手のことを考えずに。
他人に目を向けずに、自分のことばっかり見てた。
この話が本当のところ何を狙っているのかは今の所わからないし、ガンマ監督っぽく言うと「どう感じるかを決めるのはお客さん」なので、これが正しい答えなのかはわからない。
(というか、世に出した作品ってもう製作者の手を離れているわけだから、その時点でコントロールができない。人の数だけ受け取り方=正解があるから正しいも間違ってるもないんだと思うんだけれど)
今のところ「孤独を抱える未熟でひとりよがりでロマンチストで臆病な天才に振り回された12人の、世界を巻き込んだ決断と選択を巡る物語」って感じの感想かなあ、サマエル。
身も蓋もない言い方をしたら、厨二病と自意識過剰と童貞マインドをこじらせた天才のエゴの結果国家も世界も危なくなってるけど、本人が超魅力的なのでなんか免罪されちゃってる感。
でもさーーーー、あんな堂々とした男前インテリマッチョ(でも弱い)がリーダーしてたらそりゃ許しちゃうよね…(ちょろい)
でも、というかだからこそ?、オキソには憤りを感じる。
自分を魅力的に見せて対人関係を卒なくこなせる技量があるなら、もっと前の段階でそれを発揮して傷ついておけばよかったのに。
大人になってから転ぶの大変だもん。
臆病にならず、自分から壁を作らず、ちゃんと周りと向き合ったりぶつかったりすればよかったのに。
なーーにが「ぼくは孤独な悪魔」だ!!!
勝手に自分を孤独だと思い込みやがって!!!
天使みたいな声で歌ってたって、絶対に許さない。
レバーを狙って横腹にパンチを入れたい。
(鍛えてる人間相手でもレバーにヒットするとダメージを与えられるぞ。豆知識)
この話、オキソがspiさんじゃなかったら全然違うものになってただろうな…と思う。
もちろん13人それぞれの個性がぶつかり合って熱量の高いお芝居をしている舞台だから、キャストが一人変わっただけで印象はガラッと変わるんだろうけど。
くっしゃくしゃの頭をした、見えないライトセーバーを振り回すぼんやりしたナードと、ぱりっとした存在感と貫禄のある出で立ちの秘密組織のリーダーという振れ幅。声や言葉や歌や視線に宿ってる説得力。
TMOの藤田俊太郎さんも確かspiさんに対して「清濁を併せ持った人」みたいなことを言ってたと思う。
何が本当なのかよくわからない。安定してるようにも見えるし不安定にゆらゆら揺れてるようにも見える。たぶん本人の中では筋道が通ってるんだけど、それが他人から見たら思考のルートの選び方がいまいち見えづらくて謎の人っぽく見えるのかなとわたしはspiさんについて勝手に思ってるんだけど。
その謎っぽい感じと両極の要素がすごく活きた役だったんじゃないかなーと思った。
オキソに対してのブチ切れ文章で7000文字を突破してしまった。
次観たらまたかわるのかなー、それともオキソへの怒りが増すのかな。
愛されてることに気付けないのは臆病だからだし、
自分をさらけ出せないのは傲慢だからだよ。
ガッと書いて重複した部分が多いから、体裁を整えてこれはブログにまとめます。