ミュージカル『ベートーヴェン』の配信の感想です。ベートーヴェンの楽曲を歌に乗せることの難しさについてなど
ミュージカル『ベートーヴェン』の配信の感想です
(かなり正直な感想なのでその点ご容赦ください)
大前提の話
・長年楽しみにしていた演目だし日本版が制作されたことと配信で観られたことに感謝
・キャストさんはみんなとにかく歌が上手いし見事にこなしてる
・初演でここまで持ってくのは凄すぎる
音楽について
・その素晴らしいキャストが居てもなお音楽のつくりが全体的に厳しいと感じた
・ベートーヴェンってメロディメーカーだし正直もっとうまく歌に乗せられると思ってた……実際やってみると意外と難しいんだなと驚いた
・何がどう難しいと感じるかというと、歌がぜんぶ長大なレチタティーヴォみたいに聴こえる
・つまり端的にいうとサビが見えてこない
・日本語だから余計に間延びして聞こえるのかもしれない(割とそんな気もする)
・楽曲を使うのはいいけど長く使いすぎてるんじゃないかという気もした、もっとおいしいとこだけスパっと抜いてもよかったんでは
・「次は何の曲かな?」と耳をそばだてるのはまあそれなりに楽しいんですけどね
ストーリーについて
・ウィーンミュージカルの割に人間心理の部分が弱い気がした
・あの2人の不倫(説)ってそもそも大して面白くないよなということをあらためて思い出してしまった感じ
・あんなに平凡な不倫(説)をフェミニズムとミステリーの合わせ技で面白く魅せたのってほぼ青木やよひ先生(不滅の恋人=アントニー説支持者。関連著作多数)の力量よなぁ……
・とにかくあの不倫に奥行きがない(ごめんなさい)
・青木説の「悪い人ではないんだけど女性への想像力が決定的に足りない」という等身大の愚かさをもつフランツ・ブレンターノ像を知ってしまうと本作のブレンターノがあまりに単純な暴君に見えてしまうんだよなぁ
面白く感じたところ
・第九終楽章の使い方がかなり控えめで、和製ベートーヴェンものとのカルチャーの違いを感じた。お祭り要素として第九の合唱を使わないのはそれだけでカッコよく見えるから不思議
・まさかのブラザーフッド爆誕に脳から汁が出た、そのままアナ雪エンドになるかと思った(ならなかった)
・ベッティーナのベートーヴェンへのまとわりつき方が解釈一致で笑った、あのひと絶対あんな感じだったよな……
総評
・クンツェ&リーヴァイはどういう方向性であれもう少し複雑でアンビバレントなベートーヴェン像を見せてくれると期待していたので、周辺人物を含めてすべてが単純化されて奥行きのない印象を受けてしまった
・ベートーヴェンの人物と音楽の著名性を活かすってむずかしい……
・研究者諸氏の(特に音楽に対する)見解を聞きたすぎる……よかったら1月21日の配信を観てください
https://www.tohostage.com/beethoven/stream.html
・ミュージカルは改訂を重ねてブラッシュアップしていくものだと思うので今後に期待です。再演あったら普通に観たい