【小話1】
気がついたら目が醒めていた。
永遠に眠らない、そして永遠の悪夢の中にいるのだと知っていた。
あの子が同じ空の下にいないと知ってから、私の森はずっと眠らなかったのだ。
まずは何も把握できなかった。
生きるためのおぼろげな知識は靄がかかったようで、ただ偶然にも先に起こることが多少理解できたために死なずに人里にたどり着くことができたのだ。
それが【予知】なる能力であることは、その教会で教えてもらった。その先に見えているものが、占星術なる技であることも。
自分のような人間は「冒険者」と称されることや、皆そこで仕事をもらって暮らしていることは、ギルドでの人々の様子から想定できた。
それからしばらくのことは、あまり覚えてない。
酔っ払ったときにどうやって家に帰ったか覚えていないことがあるだろう、あの感じだった。
ただわかるのは、どうやら、生きているらしいということだ。
("転生")
知らないはずの言葉が脳裏によぎったことは少し覚えている。
そもそも生まれてすらいなかったような気がするのに、転生はあるのかとか10分ほど考えたが答えが出なくてやめた。
そうこう過ごしているころに、森で罠にかかっているところを、獣人の女の子が助けてくれた。
半分くらい罠で死ぬなんて芸人かな?と諦めかけていたところで、情けなさ過ぎて悔いという感情がわきもしなかった。
彼女に名乗られて、自分の名前を言おうとして。
「カペル」
「星の名前なんだ。意味は雌山羊。」
その時、初めて私は「わたし」になった。
だからこの冒険は、それ以降の話ということになる。