シナリオスランプ中なのでリハビリがてら書いたDeadLine141のHO1の前日談
GMとか他の人は見て大丈夫かもだけど
同卓PLは終了後見たほういいかも
世界は鈍色だ。
俺が作り出された時から、変わらずその色をしている。
──Project:Revenir
生まれて初めて聞いた言葉。そして俺を俺たらしめる呪い。俺を構成するとあるオーヴァードのレネゲイドが、言葉として理解をする。俺に意味を伝えてきた。
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「ねえ兄さん。調子はどうなの?」
「いつもどおり。俺はお前と違うみたい」
妹─ロズは血液を自由自在に操り、どこか見たことのある絵画を赤一色で再現している。そうだ、ロズだけは色があって見えた。
きらびやかで目に焼き付いてくる。如何しても羨ましいのに、妬ましいのに、妹だからか嫌いにはなれない。
「レネゲイトって意味わかんないよねー。兄さんとアタシだと元になったオーヴァードはほとんど一緒なんでしょ?」
「そうらしいけど……そのほんの少しの違いが、こんなにも差を生み出したって考えるのが普通じゃないか?」
二人の"違い"。人を、命を救う為に作り出された俺達はその為だけに育てられ、学ばされきた。それなのに……
『Revenir-01出てこい』
スピーカーが震え、鼓膜を震わせる。時計を見れば俺の訓練の時間になっていた。
特に服を着替えるとか、身なりを整える必要はない。ただ、ずっと作り続けていたメスをゴミ箱に突っ込んで砂へ還す。
「それじゃ」
「頑張ってね兄さん」
ロズのようにブラム=ストーカーとソラリスの力を持って生まれなかった俺は、一般人のようにしか人を救えない。
知識を蓄えて、吐き出して、実践して、何度も何度も繰り返して。そうして何日が何ヶ月が何年が経ったのか。
今日も近くの戦場で傷ついた人の治療を行う。
患者が誰かとか、どういう経緯でとか、そういうのはノイズだ。淡々と熟すだけ。
一人を救ったとか、大勢を救ったとかそんな話ではない。俺は俺の手の届く範囲の人を救う必要があるし、それが俺の生きる理由なのだから。
「■■■■■■」
目の前の小さな患者が泣き叫んでいる。冷めきった心を少し溶かして、シャドウダイバーを使って影に触れ心を読み取る。痛い、辛い…不快な感情が体に入ってくる。未だ湧いてくる感情に蓋をして、対策を講じる。
子供用に用意していた装置を起動して、影絵芝居で思考を逸らさせる。入ってくる感情の変化を感じて処置を進める。再び心を冷やし、機械のように腕を、手を動かす。
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また数年が経った。
俺たちがいた研究所はFHの襲撃によって壊された。だが、俺たちが成長するための場所だったためあまり損害はないらしい。俺的には寧ろ、目の前にいる男が泊を付けるために仕組んだのだと思う。
俺は彼の指示に従って中東の戦線で医者として渡り歩いていた。現地にいるUGNの職員から聞くにはロズは随分と活躍しているそうだ。ある時はヨーロッパで、ある時はアメリカで戦闘中に回復を行い戦線を維持しそのままFHに打ち勝ったという……うらやましい限りだ。
「それで俺にどんな指示があるのでしょうか──アッシュ・レドリックさん」
俺は戦線での多くの任務を終え、ミリオンサンズに呼び出されていた。中枢評議会の一人であり、Project:Revenirの出資者。俺の一番上にいるお偉いさんである。彼の部下に意識の無い状態で連れられ、ここがどこかはわからない。高層ビルからの光景を背に彼は、俺の問いに答える。
「サルスー…お前の活躍は私の耳に届いている。その身に宿った力で良くここまでの成果を出したものだな」
「そうですか。ありがとうございます」
「そんなお前に命令だ。極東──日本で仕事だ」
「日本…ですか。かのイスカリオテが標的としている国。それに有名なプランナーもいますし、UGNが注目している国の一つでしたよね」
それにあなたの宿敵である、テレーズ・ブルムもそこそこ支援してますよね。という言葉は心の中に閉まっておく。
俺の解答に満足したようで、彼は機嫌がよさそうに笑みを浮かべる。
「極東の戦線で更に名をあげろ」
端的に言葉を伝えられた。
別にどんな任務でも構わない。俺は今まで通り機械のように、淡々と粛々と目の前の患者を救うだけなのだから。
そこには感情は、色は要らない。
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アッシュ・レドリックは彼の部下にロイが連れて行かれるを見届けると、椅子に深く座り直し息を吐く。
「Project:Revenir…成果物としては不出来だが、その分の負債は02が補ってあまりあるので良しとしよう」
秘書に報告書を手渡す。01と02─ロイとロズについて書かれた項目には、救助者の数やそれによって得られた利益が所狭しと書かれている。
そして更に一枚、執務机にある紙をめくる。オーヴァードを軸に据えた次世代の医療環境の構築──Project:Revenirの計画書。
その実は、死んだ各ピュアブリードのオーヴァードから遺伝子情報を抜き取り、綿密に再構成して作られたデザインベイビー。Revenir"生き返る、よみがえる"に相応しい計画である。
「それにお前には他にも価値がある」
ロイの遺伝子の元になった人物一覧、ロズとは異なる人物が一人。顔写真がなく、特記事項が一つ『面影島にて採取』と。
シナリオへ続く