セイレム最後にサンソンが「どうか許してほしい」と言い、マリー王妃が「ぜんぜんへいきよ」と返したあのやり取り。サンソンの贖罪の感情と、それを許すまでの言葉があの短いやり取りに凝縮されて詰まってるように思えて、巧みでしかない。
サンソンはずっと「どうか許してほしい」と口に出せずとも思っていたのだろうし、それに対してマリー王妃はずっと「ぜんぜんへいきよ」と言っていたんだろうと思うと…。それも、それが届くのはサンソンが自分の罪をあがなったとき、自分が罪人として裁かれてようやくそれを受け入れられたんだと思うとあまりに泣く。
罪人として裁かれたサンソンが「ああ、すまない、足をぶつけた。わざとではなかったんだ。どうか許してほしい」と罪人のマリーと同じことを良い、マリーはそれに対して前と同じように(前となにも変わらず)「全然平気よ。それより、貴方の靴が汚れなくてよかった」というんだ…。
サンソンは今まで「自分が許されることを受け入れられなかった」から「許してほしいとも言えなかった」、許してほしいと言えないことは許されない事と同じ。でもマリーはずっと許しを与えていて、今回のセイレムで罪人として裁かれることでようやくその許しが届いたんだ…。
それで許しを見たサンソンが微笑んで、あのセイレムの中で唯一みせたような微笑みで「ああ、君だったのか」というのあまりに泣くでしょ。
それでマリーの形をした許しが「さあ、行きましょうシャルル」というのほんと泣くでしょ。
泣きました。