斜線堂先生note『死体埋め部の栄光と崩壊』読了。
信仰と神様殺しの物語だった。先輩の「否認」を望んだ祝部くんと同じくらい、先輩も「承認」してほしかったんだろうな。祝部視点なので先輩の神性がぼろぼろと崩れていくさまがたまらなかった
「一度茹でた卵は戻らないの!」
っていう先輩のことば、彼自身がやめられなかった死体埋め部、普通ではないこと、それでも求めてしまった普通のこと(祝部との普通の先輩後輩の関係性)、普通でないところから普通を求めてしまったら、普通の方が負けてしまうよなあ、と思ってかなしくなってしまった。
死体埋め部の栄光と崩壊、というタイトルが最初に出たところから、一話を読んで、この物語のいくさきは彼らの関係性の崩壊なんだろうな、と思いを馳せ、きっと織賀先輩に殺される祝部くんか、祝部くんが織賀先輩を埋めるのかどっちかだろうな、と思っていたわけなんですが、祝部くんが先輩を埋めることができなくてつらかった。
祝部くんにとって先輩の存在は神様だったけれど、神様殺しを真っ向から受け止められるほど、祝部くんは強くなくて、人間としての織賀先輩にも親しみを持っていたのならいいなあ。
彼が織賀先輩の埋め部のお仕事をすんなり受け継げるほどの悪質な強さがあれば、ことはもっと穏やかですんだのになぁ、と思うし、最初に織賀先輩の申し出を断るほどの強さがあれば、こんなにもだれかをすべてにすることもなかったんだろうなあ。
「何で俺だけいつも駄目なの? 普通? 健全? んなもん俺だって欲しいよ」
織賀先輩の、今まで祝部くんの視点から見えていた神性がぼろぼろと剥がれていくこの台詞、あまりにも人間であって、この先輩を抱き締められる世界線ならよかったのに!と思った。残念ながらそういう話ではない。
祝部くんは織賀先輩に「神様であること」を望んでしまったから、神様でなくなった織賀先輩は殺さなければならなかっただろうけど、ここまで二人が行く前に、それこそ、埋められてボロ泣きした先輩の頃に祝部くんが出会っていたのなら、一緒に手を繋げたのかもしれないなあと思って、ありもしない空想をしてみたりした。
人生を滅茶苦茶にされた、というのは、彼らの関係ではあまりにも愛の告白めいた言葉ではないか、と思いつつ、たぶん滅茶苦茶にされたのは織賀先輩もだろうなぁ、と思う。
祝部くんの都合のいい妄想だとしても、穴の底から聞こえた先輩の言葉はあまりにも「後輩を心配する先輩」だった。
三話から四話の流れがたいへんにお見事で、想定しうる結末でさえも感情を滅茶苦茶にされる。青春とおかしな部活の狂った物語だった。織賀先輩に祈ってしまう、祝部くんの感情を、想像してしまう。最高。
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