「シラノ・ド・ベルジュラックに会いたい!」の悪口です。
言われたら断れない系の若い作家が、いろんなステークホルダーに好き勝手言われて、さらに自分の友達の恋愛に巻き込まれたりするうちに「シラノ・ド・ベルジュラック」が出来上がっていくという、三谷幸喜っぽいテンポの喜劇で本筋は面白かった。けど、女性の扱いに小骨が多すぎて、後半ずっと眉間にシワが寄っちゃったよ!
特に千本のっこポジの「わがままな女優」の扱いひどくない?彼女は最初こそ「ヒロインは若い女優じゃなきゃ」って主人公も不満で頭痛の種だけど、ちゃんとセリフも頭に入れてきてるしハッパの掛け方も筋が通ってて、「権力に楯突くならアタシ抜きでやらないでよ」みたいな肝の座ったところがあってわたし大好きだったんです。「明日からどうなるんだ」的に舞台袖で弱音を吐くシラノ役の役者に「いつからあたしたちに明日があると思い違いしてたの?あたしたち役者にとってはね、常にその瞬間しかないの。舞台の上の一瞬一瞬、そこにあるのはお客様と自分だけ。その一瞬に全力を尽くす、それだけでしょ」という(一字一句同じではない)超かっこいいセリフを吐くから感動してたのに、本番直前で奈落に落ちて気を失って、結局演技経験ない若くてかわいい衣装係がヒロインになるって、あんまりでしょ。しかも頭打ってちょっとバカというかイノセントというか、ホワホワした言動になっちゃって、あの鼻っ柱が強くて扱いづらい女だったのが「扱いやすく」なったのがめでたしってそれ誰目線よ!?と激おこですよわたし。
この女優だけじゃなくて、衣装係もずっと主人公を慕ってるだけでちょっとキャラクター的につまんないと思ったし、娼館の女性たちも「今日は客として舞台を見る」日だと思って、女性同士で楽しそうにしている表現かと思ったのに「男性陣、さあ彼女たちのお相手を」みたいになって、女性陣も男性とペアになっていくのを「楽しそうに受け入れて」いて、これどうなんでしょう。そもそも、童貞の役者が娼婦で筆おろしして一皮剥ける、という表現をなんのてらいもなく2020年に見るとは思いませんでしたわたし。ハァ!?!?!?
で、最後に妻ですよ。夫である主人公、精神的には完全に浮気、ミューズだから彼女から着想もらってるだけで本気じゃないからって言い訳もひどくて、フェミニズム映画ならそれ聞いて妻が怒って夫を捨てて手紙の相手の女性と仲良くなる展開だわ。で、君が僕の才能を信じてくれなくなったからだよとか、浮気を妻のせいにするし、最後に「あなたを信じなくてごめんなさい」って妻に謝らせる展開、ハァ!?!?!?
女性の描写は全部小骨、それどころか鯨の背骨サイズの引っ掛かりでしたわ!本筋は面白いんだけど、わたしにはこれは飲み込める範囲を大きく逸脱してました。こんなんなら女を出すな。男だけでやって!