『鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎』気付いた点と考察まとめた。ネタバレ注意。約4000文字
・長田幻治(糸目の石田彰)の主従関係
・龍賀家の因習村的近親相姦風習
・哭倉村の鬱屈した人間関係
・冒頭に登場した列車乗客の末路と日本人形
など
『鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎』気付いた点と考察まとめ。
ネタバレ注意。
※フォロワーさんともくりで通話しながらそれあり得る〜!!!と盛り上がった考察も入れてます。
※ゲゲゲの謎を鑑賞して面白かった!こういう背景設定もあったりするのかな?個人的に気付いて盛り上がった!というような感想を殴り書きしている拙い散文ですがどうか間違っている部分などがあっても悪しからず……!個人の見解というか感想です……!
※追記したら5500文字近くになりました。
【龍賀家の因習的近親相姦】
・龍賀時貞(当主のジジイ)は直系の女衆と性交して「龍賀の女のつとめ」という名目で子供を成させようとする風習がある。龍賀家の女は霊力が強いため、それを絶やさないようにか。※この辺は台詞の記憶があやふや
・真の目的は時貞翁(当主のジジイ)が死んでも血の近い肉体に乗り移って受肉するための器を用意するといった部分かもしれない。
・劇中で「時貞はそのために作った子だ」といったニュアンスの台詞を言ってた気がする。
・時貞翁(当主のジジイ)の遺言で直系の息子長男である時麿を後継に指名していたが、時麿が亡くなれば更に直系の孫である時哉を指名しているので、死後に器として乗り移り再び龍賀家当主に返り咲こうと言う魂胆が見え見え。
・そのため龍賀時貞(当主のジジイ)の娘三姉妹・孫娘である龍賀乙米(長女)、龍賀丙江(次女)、長田康子(三女)、龍賀沙代(孫娘)はいずれもジジイと近親相姦している……と思われる。
・少なくとも龍賀沙代(孫娘)はジジイのお気に入りであると台詞から肉体関係が確定している。
しかしジジイの子供を孕めなかったとも、沙代の母親である乙米が言っている。※ここもちょっと記憶があやふや
・龍賀丙江(次女)は近親相姦に堪え兼ねてか駆け落ちしたものの、龍賀家に連れ戻されてしまいやさぐれている。
・物語序盤付近で村人との事後シーンがある。左下に相手の男の足が見える。
・龍賀丙江(次女)が龍賀沙代にちょっかいをかけたのは、自分が駆け落ちに失敗し村から逃げ切れなかったのに、沙代が水木と懇意にしているのを許せなかったからか。
【主従愛と時代錯誤な結婚事情】
・哭倉村を牛耳る龍賀家は近親相姦により親子関係も人間関係もめちゃくちゃになっているが、そもそも哭倉村も戦後昭和30年代の閉塞感とクソ因習村かつ田舎僻地特有の監視社会が成立しているため、個々人に許された自由が希薄であり泥沼。
『ひぐらしのなく頃に』の雛見沢村や『屍鬼』の外場村、ホラーゲーム『SIREN』の羽生田村、『犬神家の一族』の一族の悪いところを全部集めた感じ。クソ因習村の蠱毒。
劇中でも水木が言っていたけど、法治国家日本の道徳倫理が通用しない。戦前戦時中の価値観がそのままにされているというか、疑わしきは村八分、村の掟に背けば村独自のルールによって断罪され、そこに水木が東京という都会で当たり前と享受していた新たな価値基準の入り込む余地がない。
戦後少しずつGHQ政策などから持ち込まれ一般化していった、女性の解放といった五大改革による民主化、自由化の波が到達していない?到達していたとしても村側独自の権力構造やコミュニティ独自のルールが根強くて全く浸透していない感じがした。
水木や克典(社長)という余所者にとってはなんだか異様な村社会に映るけれど、昭和30年代に現行で存在していた排他的で閉ざされた僻地の村々はあんな感じが普通だったのだろうか。銀座のクリームソーダや駄菓子屋で水木とゲゲ郎が食べていたアイスなど、戦後復興して確かに地方まで届くようになった「かつてぜいたくだったもの」が当たり前に存在しているという、現代の大量消費社会化に伴う物質的裕福さみたいなものを見るたびにちょっと安堵感を覚えている自分がいた。
いや大正時代から日本はそのような気骨があったし、特段あの村が困窮してる訳じゃないんだけど、現代文明の人権意識なんかに慣れてると、劇中に描写されている比較的現代寄りの都会と外部から持ち込まれるものはあっても積極的に物事が更新されない停滞した地方のギャップで精神的に擦り減るところもなくはない。精神的に擦り減る?というよりは、劇中舞台の時代背景という形で時代考証もしっかりした上で、かつてはこんなんだったのよ、と突きつけられると、つくづく現代社会の有り難みがわかる……。
時代と片付けるにはちょっと複雑な背景が絡み合ってるけど、便宜的に言えばそんな風に醸成されていった時代の最中、恋愛結婚なんて稀少事例だっただろうと思う。お家のために嫁ぐが女の誉れみたいなところがあったのだろうが、哭倉村に関しては先述の理由から龍賀の女は完全に孕み袋扱いされてる。
・龍賀乙米(長女)と長田幻治(村長・糸目の石田彰)は主従関係だが、パンフレットやトークショーによると互いに10代、20代の頃から想い合っていたらしい。
・龍賀乙米(長女)と龍賀克典(社長)の夫婦仲は険悪であるが、恐らく政略結婚のせいで想い合っていた長田幻治(糸目の石田彰)と結ばれなかったのも理由か。
・劇中で龍賀乙米(長女)に対して長田幻治(糸目の石田彰)がやけに気遣わしげなのはそういう想い合った関係であることが滲み出ているっぽい。
・長田幻治(糸目の石田彰)は龍賀康子(三女)と結婚して村長となっているが、裏鬼道衆という余所者かつ流れ者であった長田が村長の地位に着くためには、村を牛耳る龍賀家の者と契りを結ばねばならなかったからか。となるとこちらも政略結婚ということになる。
・長田幻治(糸目の石田彰)は龍賀康子(三女)との間に龍賀時哉という息子を儲けたが、近親相姦により長田幻治の実子であるかは正直不明。
時哉は、ジジイが父親の可能性、長田が父親の可能性と、2パターンが考えられる。
時哉がジジイの子供だった場合、時哉の強い抵抗に合ったものの結果的に肉体を乗っ取れたのは血の近さ故か。
また時哉の体が弱いのは近親相姦交配による遺伝子疾患の可能性もある。
・時哉の母親に関しても、龍賀康子(三女)が母親の可能性、龍賀沙代(孫娘)が母親の可能性があるという考察を見かけたが真偽不明。ただし時哉がジジイの息子である可能性は相当高いかも。
・龍賀乙米(長女)は龍賀克典(社長)と政略結婚して龍賀沙代という娘を儲けたが、近親相姦により龍賀克典の実子であるかは正直不明。
沙代は、ジジイが父親の可能性、克典が父親の可能性、もしかしたら身体の関係だけあって長田が父親の可能性も微レ存と、3パターンが考えられる。
・もし長田幻治(糸目の石田彰)が龍賀沙代の父親だった場合、沙代の操る狂骨に殺された乙米の仇を取るため、想い人である乙米の実子でありもしかすれば長田の実娘であったかもしれない沙代を殺したことになる。ワンチャン親子三人で殺し合ってるかもしれない。とんでもねえ。
・しかし長田幻治(糸目の石田彰)は龍賀乙米(長女)のことを「お嬢様」「奥様」としか呼んでおらずら最後の最後に初めて「乙米様!」と呼んだらしく、その反応からして沙代が二人の娘である可能性は低いか。
【冒頭に登場した列車乗客の末路】
・冒頭の列車内にて、タバコの煙にむせて何度も咳き込んでいる日本人形を持った女の子、咳き込む女の子の背中をさすって心配そうに気遣う母親がいる。
・龍賀家地下の「M」血液製剤精製工場にて、電車内で咳き込んでいた女の子の日本人形がゴミ捨て場に捨てられている。
・また血清精製母体としてベッドに繋がれ廃人化している者(真人に無為転変された改造人間みたいな見た目の人達)の一人が同じ声で咳き込んでおり、冒頭の列車内に居た女の子だと分かる。
・変わり果てた姿で咳き込む女の子を、隣のベッドで心配そうに見つめ、声を掛けようと唸り声を上げている廃人は恐らく冒頭の母親。
・およそ30名〜50名程度、血清精製母体としてベッドに拘束され廃人化した人間が地下に居るが、恐らく村人が列車の乗客を村ぐるみで捕縛したか。
→発覚を防ぐため降車後に拉致したか。
→その場合、列車乗客の集団失踪事件か何かが起こっていると思われる。
→ラストで哭倉村に警察と消防がやって来ていたが、列車乗客の失踪者人数と龍賀家地下の廃人化人間の人数を照らし合わせたら大変なことになりそう。
→龍賀一族の政財界に対する影響力からして血清剤「M」に関する事実は歴史から揉み消されていそう。
→ラストの狂骨エレクトリカルパレード、『blood-c』の最終回で有名なグロアニメ大虐殺並に村がとんでもないことになってたけど、ひぐらしの雛見沢大災害みたいな大規模な毒ガスの発生事故で片付けられてたりしないか?鬼太郎をつけ回していたあの記者が哭倉村大災害()について記事にするのを正直期待。
【列車乗客である目玉親父は?】
・龍賀時麿(長男)が殺された際、怪しげな男が彷徨いていたと目玉親父が連れてこられたが、実際は降車した列車乗客達を村ぐるみで拉致して地下血清工場行きにしていく中、幽霊族の生き残りである目玉親父を見つけた裏鬼道衆がギョッとして連行したのではないか、という考察。
・哭倉村で降車した列車乗客は軒並み拉致されているのだろうか。一度入村したら出られない因習村。ミッドサマーかな?
・村外の人間を拉致して血清廃人にする実行犯は、村人ではなく裏鬼道衆な気がする。
・冒頭の親子を横目でニヤニヤと見ている列車乗客もいた(予告編でも見られる)が、どうやら裏鬼道衆の一人だったらしい。やはり裏鬼道衆が実行犯で列車へ頻繁に乗降し品定めに来ているのか。
・裏鬼道衆が実行犯だとすると、幽霊族である目玉親父を見分けられたのも納得がいく。
しかし妻を探して三千里でふらふらしていた目玉親父も十分不審者なので、哭倉村で余所者が彷徨いていたから普通に怪しくて連れてきただけかもしれない。
・どちらにせよ裏鬼道衆は幽霊族の見分けが付くと思われるので、殺人事件の犯人に仕立て上げつつ、裏鬼道衆の長である長田に目玉親父が幽霊族であることを目視で確認させるため連れて来たのかも。※ここもちょっと記憶があやふやで幽霊族である奥さんと夫婦であることに驚いていたシーンがあったと思うので見分け付かないのかな……?画面の情報が多くて複数回見に行ってもまだ見足りない
・この時点で列車乗客は無事だったのか捕まっていたのかは不明。
・哭倉村には旅館もあったようなので、外部の人間を誰にも見られず拉致出来る現場として人喰い旅館化している感じがする。
・血清剤「M」精製に、長男として時麿が後を継ぐはずだったのにぬっ殺されちゃったせいで、長女の乙米が仕方なく代わりを務めて疲弊しながら長田に支えられているシーンがある。その時には既に列車乗客含む村外の人間を軒並み血清廃人化させていたのかもしれない。
【総合的な感想】
ゲゲゲの謎、最高に面白い。
ひと財産を築いた名士一族の遺産相続争いや、クソみたいな閉鎖的村落の悪いところ煮凝り。横行する近親相姦、肉体関係、恋愛感情、嫉妬、憎悪、憧れ、渇望、愛憎こもごもに煮詰めて、泥沼の人間関係蠱毒をここまで緻密に気持ち悪いほど描くのが、まさかのゲゲゲの鬼太郎(大人向け)なのは予想外だった。出力するジャンルそれでええんか!?劇場に来てた親子連れ何組か途中退出してたけど!?事故ってない!?
金田一、横溝シリーズ、犬神家の一族、邦画ホラーあるあるなどを網羅しつつ、人外と人間のおっさん二人が無双するバディものブロマンスとしても傑作。最強、二人。
『I beg you』歌いそうな女(ヒロイン兼黒幕)まで登場。
糸目の石田彰目当てにスキップして劇場に駆け込んだらダンプで横腹から突っ込まれた気分。お前CV石田彰の市丸ギンだろ。やさぐれた乱菊さんもいる。
ゲゲゲの鬼太郎という本来子供向けでありつつ青年向けでもある作品が、周年を記念してエログロナンセンスを全部ぶち込んだ救いも容赦もないスプラッタサスペンスホラーに仕上がっていて愛を感じた。ただ血飛沫が飛び散ってグロいだけじゃない。ただ人間関係がクソすぎてグロいだけじゃない。
エゴが捨てきれず、少しずるくてひねているけど、人間臭い情の厚さもあり、そこに加わるひと匙の勇気、そして種族は違えど不変の親子愛がある。そんな水木とゲゲ郎の優しさが好きになれる話でもあった。
因習村のドロドロ人間関係な一族のサスペンスを展開しつつ、妖怪や幽霊族、裏鬼道などのファンタジー要素をトリックに絡めているが突飛なファンタジックさではない。ストーリーも重厚感があり、理屈の通ったファンタジックだった。伏線も丁寧に張り巡らせている。そして丁寧に風呂敷を畳んで、ちょっぴり余韻を感じさせる余白もあって、自然とアニメゲゲゲの鬼太郎6期に興味を持てるよう誘導している。興味の持たせ方が上手い。
小さいお子様が見たとしても、脳天串刺しや人間バードストライク、首切断などの直接的なグロ描写以外は配慮されている。作中の性的暴行などについても、台詞や事後シーン、襲う直前などに留め直接描写はなく、知識のある子供や大人なら察せるという絶妙な匙加減で描いているからトラウマになることは少ないかもしれない。その絶妙に隠そうとしている感が妙に生々しくて気持ちが悪い。すごい。とにかく仕草や裏側で察せる人間関係の鬱屈具合など描写がすごいんだ……。
人間と妖怪(幽霊族など)、一体どちらが化け物なのかと言われれば今回の話は完全に人間が化け物だった。みんな幸せになってほしい。でもそうはならなかった、ならなかったんだよ、ロック。
後味の悪さは『TRICK』だったけど、全員犯人という意味では『オリエント急行殺人事件』でもあった。『Another』感も少しある。あらゆるサスペンスやホラーを鑑賞していれば鑑賞しているほど、色んな作品の面白くて良いところを詰め込んでいるのがゲゲゲの謎だと分かる。
ゲゲゲの鬼太郎原作リスペクトも凄くて、ある意味原作を再解釈、再構築、リメイクした上での原点回帰といった感じ。
私の言語化能力ではとても語りきれないので是非劇場に行ってほしい、と書いたところでこれが完全に劇場へ行った人用のふせったーだと思い出して泣いた。