同類には薄々察せられているであろう趣味の悪い『ヰ書』の話。主にNPC視点。
※未通過現行× ※そんなの知りたくなかった…となる可能性あり
エグい(グロもだし精神的なダメージも)話が苦手な方は回避してください。
なお、「ただしフィクションに限る」です。リアルなのは全然ダメなので。
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シナリオのKP向け情報などを読まれた方は、わたしがエメトフィリアのみならず、状態異常・フリークスに執着があると察しがつくだろうと思います。ちゃんと動けて喋れるのに中身が得体のしれないものになってるとか、内臓の配置がぐちゃぐちゃとか、逆に人間の形を保ててないのに感覚や記憶だけはあったとか、そのあたりの落差イイヨネ。正確には自分にとってそれが強烈な嫌悪・恐怖を呼び起こすものであるからこそフェティシズムの対象でもあるというか。だいたい怖がりのホラー好きの精神性はドMだからしかたない。
なので序盤の探索者には(特に医学持ちは強烈に)自分の体を見下ろして「コレの中身どうなってんの…?」ってゾッとしてほしいな~と。特に、戻したり傷口見てエッてなってもらえてたら嬉しい。いや嬉しいて。
もち、医師NPCの診察において、客観的な証拠として出てくる「死んでるか死んでないかで言ったら死んでるバイタルサイン」「内臓と骨格が福笑いしてるレントゲン写真」もお気に入りポイントなんですが、ここはNPCから見て友人である探索者が一気に「得体のしれないもの」と化すのがね。そら発狂の流れですよね。むしろSANCに成功しないでほしい。
この場面は、探索者は自分のことなのに(だからこそ、か?)割と冷静で、NPCを何とか落ち着かせようとしてくれる人が多いのも印象的。メタや事前情報で察してるというのもあるけど。
そしてここでNPCはすでにうっすら思う。友人は"あっちの案件"に関わったのでは。あの本に関わり、自分に関わった結果、このリアルゾンビ状態になっちゃったのでは? でもそうだとは断定できない、いや信じたくない。あってほしくない。とりあえず友人の手助けをしながら、自身も失ってしまっている記憶を探り始める(ぶっちゃけ、このときNPCが自分の行動調べたらわかるんですけどね、探索者から連絡受けた直後、自分が教団に連絡取ってるってことは)。
そして探索が進むについてNPCの中ではじわじわと「自分が黒判定」されていく。が、その衝撃が精神にクると本能でわかっているから、無意識に正解に行ける推理のルートを回避し、意識に上がってこようとする記憶を抑圧し続ける。こう、たとえば、窓を開け放しちゃって室内飼いのペットが外に出てしまって交通事故とかに遭ったりしたら、窓を開けたのは「自分じゃない」と思いたい一方で「自分かもしれない」の想像を瞬時にすると思う。ここではNPCはその因果関係に目を背けることで何とか恐怖を鈍らせている。ちな、中盤で探索者とNPCが直接接触した場合、医師としての知識と人間としての感覚が、探索者が"ほぼ死体"であることをつきつけてくるので、NPCは本能レベルでは恐怖や忌避を覚えつつ、理性や感情ではまだ「友人を助けなければ」と感じている。
で、「対峙」が発生すると、NPCは下意識の海に無理やり沈め続けていた記憶をひっぱりあげてしまう。あれ以降、NPCの視界には、一緒に学校行ったり仕事したり遊んだり飲み食いしてきた友人の姿と、その「なかみ」や「できかけ」、殺された直後の「死体」、蘇生を終えた後の「できあがり」がダブって見える。友人の差し出す手に筋線維と骨を見、首筋に頸動脈の傷と血を見、見慣れた背中にできかけの内臓やら位置を間違えたや目やら耳やら口やらの幻影を見る。
そもそも、現実で起きうる範囲であろうとも、友人のレバーとかふいに見てしまったら一発発狂待ったなしだと思うんですが、それの10倍くらいひどいものを見ていたわけで。しかも自分が死のトリガーを引き、かつ自分が蘇生に失敗したという、「自分が黒」であることは確定した状態で。そら発狂以下略。
ので、この時のNPCは「自分が友人の死を誘発した」ショックだけではない、割とリアルSANが減るフラッシュバックを起こしていると考えながら描写・RPしています。もはや探索者の手は死人の温度、とかそういう問題じゃない。その手のなかみの肉やら血管やら骨やらも、その手が冷たくなって絨毯の上に投げ出されていたさまも思い出せてしまう。しかもそれ自分でやったやつ。よーし発狂だ!泣きわめこう!ってなりますよね。うん。
それにくわえ、同じところに立っていたはずの探索者とNPCの立ち位置がここに至って完全に断絶し、NPCはがくんと一段落っこちる。正常と異常、被害者と加害者、巻き込まれた者と巻き込んだ者、まー色々ありますが、ここでNPCは自分が友人との間に二度と修復できない亀裂を作ったことを思い知ります。わたしがここ最近自分で回す時はだいたいNPCをしゃがみこませたり膝をつかせたりしてるんですが、構図として一番しっくりくる気がしてます(近かった顔の位置が遠ざかり、そしてNPCが低い位置にいる)。
本当にアレなのはその後。
Aエンドに進んだ場合、NPCは探索者が無事であることに心から安堵するし、許されるかどうかはおいておいて心底から謝罪するわけですが、だからといって記憶が消えるわけじゃない。起きてしまった断絶がリセットされるわけでもない。
探索者が喫緊の課題をクリアしたことで終わり良ければなんとやら、あるいは助けようとしていた事実をもって、探索者がNPCを許容したにせよ。抱擁や握手の体温が正常であるにせよ。たぶん二度と「なかみ」を忘れることはできないし、何なら顔見た瞬間に肉塊を思い出す。で、昨日までは対等であったはずの立場も、二度と「何も起きていなかったときの友人同士の関係」には戻らない。いわゆる負い目ってやつですね。たとえば声を上げて泣いて謝って、許されて背を抱かれた瞬間に脈打つ臓器のフラッシュバックを起こすことすらありうる。
でも、それが本人にとって強烈に生々しくずっと痛むからこそ、それをまた引き起こさないために何をすべきかきちんと考えて、それを実行するとこまでいく。CoCにおいて「狂信者が改心する展開」ってのをリアルめにやろうとすると、わりとエグイものになるんじゃないかな~と。
つまりこのシナリオのNPCにとって、探索者とは「恐怖/嫌悪/罪悪感と友情/愛情/慈しみが攪拌された状態で共存している相手」となる……PCに\わーいクソデカ感情!/とか言ってる場合じゃなかったな。