【オープニング、武蔵、上総】
うつしよの帳の本編物語を複写しました。
式姫クラスタで読みたい方がいると思って上げてます。
何かしらあれば削除します。
#かくりよの門 #うつしよの帳 #式姫Project
うつしよの帳ゲーム中の本編物語です。
うつしよの帳の開発元、配信元は『株式会社アピリッツ』です。
作品の一切は『株式会社アピリッツ』の権利です。
転載者は非営利目的であり、金銭の利益はありません。
削除依頼があった場合、速やかに削除します。
公式から再度この物語が公開された場合も削除します。
・株式会社アピリッツ
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姉妹作品にブラウザゲーム『かくりよの門』があります。いかがですか!?
・かくりよの門 公式ホームページ
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式姫Projectに興味を持ったならこちらにどうぞ!
・式姫大全
http://www.shikihime-project.com
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※スマホ版では自動改行されて読みづらいかと思います。
PC版サイトでの閲読を推奨します。
※主人公の名前を「主人公」としています。
お好きな名前に脳内変換して下さい。
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【オープニング】
……!
何も見えない。
聞こえていたはずの音も遠くなる。
感じていたはずの風の感触も。
……いったい、何をしているのだろう。
歩いているのか、止まっているのか。
感覚は、まだ消えない。
だからきっと、ここにいる。
ほんとうに、ここにいる?
なにもみえない、わからない。
不安で心が潰れそうになる。
そんな折――
視界の端に、彼女が映る――
……
私を守るように立つ姿に安堵を覚え、
それまでの恐れはなく、
意識は闇へと沈み込んでいった。
……
葉月:あの、聞こえますか……?
……いえ、聞いていますか?
主人公:えっ!? あ……ごめん。
ちょっとボケっとしちゃってた。
葉月(はづき)ちゃんに声をかけられ、
われにかえる。
これから式姫たちと一緒に、
遠征に行かなければならない。
「トバリ」との戦いを思い出すために。
不安が無い訳ではないけれど、
みんながいるから、なんとかなるよね。
そう思いながら、私は屋敷を出る。
振り返った屋敷に、
全く見覚えはない。
「私の家」であるはずなのに。
私は自分の名前以外、
何も思い出せていなかった――
【武蔵】本郷村
――帳の向こう 壱――
葉月:さすが、式姫を
召喚できただけは
ありますね……
葉月:記憶を失っても、
トバリを討つ動きに
迷いはありませんでした。
主人公:トバリ、っていうのは、
私たちが戦った相手、
でいいんだよね?
葉月:……やはり、思い出せませんか?
主人公:うん……
身体は勝手に動くんだけど、
思い出せるものは……ないかな。
葉月:もう少し先に進みましょうか。
……その分なら、トバリの
説明も必要そうですし……
主人公:ん……ありがとう。
道案内をお願いね、葉月ちゃん!
葉月:……はい。
私が誰かのお役に立てるなら
……それは、嬉しいことなので。
――帳の向こう 弐――
主人公:稲穂がなびいて見えても、
風は吹いていない。例え雨が
降りだしても、濡れることはない――
主人公:これが「トバリ」のいる狭間。
「帳の境界」なんだよね?
葉月:……説明したこと、
覚えていてくださったんですね。
……ありがとうございます。
葉月:うつしよの帳の向こう側。
少しだけズレた世界。
誰も見れない、感じられない。
葉月:それが「トバリ」の棲む境界です。
知らないのに、見られないのに、
確かにそこにある空間――
葉月:この先に、この辺りのトバリの中でも
さらに強力な『案山子神』の
気配……縁を感じます。
葉月:今の主人公さんなら、
問題ないと思われますが……
その、ご用心を……
主人公:うん。次で最後みたいだし、
気合い入れていかないとね!
――帳の向こう 終――
葉月:……先ほどの「案山子神」が
あの地のトバリの中でも
……最も縁が強く……
葉月:このままではうつしよに現れる
可能性が高かったものになります。
……その、多分……ですけど。
主人公:トバリの力が強くなると、
妖怪や祟り神として、
うつしよに現れる、かあ……
葉月:……主人公さんは
元々全国でトバリを
狩っていたと思うんですが……
葉月:どう、でしょう……?
何か思い出せそうですか?
主人公:ううん。ぜーんぜん……
「そうなのだ」と言われたら、
「そうなんですか」と返せそう。
葉月:す、すみません……
仮説を押し付けるつもりでは……
主人公:あっ、ごめん!
そういうつもりじゃなかったんだ。
主人公:だって葉月ちゃんは、
倒れていた私を助けて
くれたんだよね。
主人公:確か「物見(ものみ)」の
力だっけ。
えっと……
葉月:はい……私はそう呼んでいます。
詳しい説明は、落ち着いてから
改めて……で。
主人公:うんっ! よろしくっ。
葉月:その……
……信じてくれて、
ありがとうございます……
【上総】大多喜村
――陰陽師の娘と物見の娘 壱――
葉月:あの、主人公さん。
その……「物見」なんですが……
主人公:うん?
何か見えた?
葉月:……その、まだ詳しくは
わからないのですが……
葉月:主人公さんの使役する式姫。
そして、主人公さんに
縁がある……祠が見えます。
葉月:ひょっとしたら、気が付かない範囲で
主人公さんに記憶の
手掛かりが生まれて……
葉月:その祠と縁が生まれたのかも……
す、すみません……
確証はないんですが……
主人公:式姫の祠に……
あれっ、うん……?
葉月:ど、どうかしましたか……?
主人公:今少し、何か引っかかった。
そんな気がしたけど……
ダメだね、まだ思い出せないや。
葉月:そう、ですか……
その、式姫の祠にいる
「大トバリ」。
葉月:彼らは討伐すると、
式姫の召喚や強化に必要な
「力」を残すと言われています。
葉月:【協力戦】から
確認してみてください。
葉月:挑むことのできる「祠」は
少しずつ……縁が生まれて
増えていくと、思います……
主人公:式姫のために、だね。
私たちの旅と並行して、
後で行ってみようか。
主人公:そして、それはそれとして、
もう少し先に進もう!
次も農村、なんだよね?
葉月:……で、では……
「物見」で案内しますね……
主人公:よろしくね!
――陰陽師の娘と物見の娘 弐――
記憶の鍵を探して、
以前と同じように旅をする。
式姫を使役しながら。
目を覚まし、式姫を
召喚した私に、葉月ちゃんが
提案してきたことだった。
……
主人公:……あの家も……
まだ違和感があるけれど、
私の屋敷、でいいんだよね……?
主人公:「物見」の力でそう見えた、って。
式姫の祠も、きっと同じように
見えたのかな?
葉月:はい。その……倒れていた
主人公さんを
抱き上げたとき……
葉月:あの「屋敷」が見えたんです。
主人公さんと
つながる縁のある屋敷だ、って。
主人公:私と、屋敷の縁……?
葉月:縁、と呼ぶのが正しいのかどうかは
わかりませんが……
葉月:私には、他の方に見えないものが
少しだけ見えるようで……
葉月:落し物の持ち主や、隠れ郷など、
物の在り処や、つながりが見えます。
主人公:それが「物見」の力。
葉月ちゃんがトバリを探して
見つけ出す力なんだよね。
葉月:ただ……私自身もまだ不確かで、
この目がどこまでを見通せる
ものなのかはわかりません……
……
葉月ちゃんは自信がなさそうだったが、
当時の私は、その話を聞いて
すぐに信じ込んでいた。
私の記憶を探る旅と、
葉月ちゃんのトバリを探す旅。
目的も一緒だったし、
その……正直不安だったのもあり、
私は葉月ちゃんと旅をすることにした。
手近な農村から始めた旅だったけれど……
このときはまだ、ちょっと変わった旅。
そんな風に思っていたんだ……うん。
知らないこと、
多分、隠されていたこと。
気づいてはいたけれど……
それでいい、と思っていた。
記憶への不安からか、
自分を優先したのかもしれない。
――陰陽師の娘と物見の娘 参――
その場所へと近づくと、
まるで雨天の直前のように
空気は湿気を帯びた。
見上げる空には太陽。
光は葉の影を作るが、
空気だけが明らかに異質。
……
主人公:帳の境界のはずなのに、
天気も悪くなってきたね。
主人公:遠くから雷の音も聞こえるよ。
うう……ちょっと怖いなあ。
狐が嫁入るわけでもないのに。
葉月:トバリは……帳のように、
うつしよと何かの境目に
生息しています……
主人公:ふむふむ。
そうだったよね、うん。
葉月:ですがいくつかのトバリは、
境目を超え、うつしよに
姿を現すことが可能なんです。
主人公:それがこの前言っていた
『妖怪や祟り神になる』って
ことなんだよね。
葉月:私は……この「物見」で
トバリの縁を感じ、
調べる旅をしてました……
葉月:帳の境界を探して、
妖怪が現れそうな場所として
警告していたんです……
主人公:……この先にいるんだよね。
そんな、妖怪や祟り神に
なりそうなトバリが。
葉月:……はい。名前は「雷獣」
雷を呼ぶ獣の目撃談が、
トバリになったのかな、と……
主人公:雷、かあ。
式姫のおへそも取られないように
気を付けないとね!
――陰陽師の娘と門身の娘 終――
主人公:ふー……これで、
ひとまずは大丈夫、なのかな?
葉月:……はい、雷獣の気配は
薄くなり、縁も見えなく
なりました……
葉月:しばらくは、きっと……
主人公:しばらく、かあ……
葉月:……そ、それでも、
安心できるってことは
いいことだと思います……
主人公:そうだね、ありがとう!
……
主人公:あれっ、向こうに
作物の刈り入れを
している人がいるね。
主人公:がんばってくださいねー!
村人?:……
村人?:…………
主人公:うぐ……無視されちゃった。
忙しいのかな?
悪いことしちゃったなあ……
葉月:……
葉月:(やっぱり……)
【安房】乙浜漁村 ――見えないもの―― に続きます。
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