『フリクリ プログレ』第1話感想。第1話は楽しめた。
楽しめた理由はいくつかある。しかしそれらを挙げる前にまずひとつ。アバンのビジュアルイメージが近年の榎戸作品と奇跡的シンクロを果たしていて言及せざるを得ないのがずるい。頭に男根のメタファー的なものを生やしたヒドミの姿は、角の色からして否応なく『文豪ストレイドッグス DEAD APPLE』の澁澤龍彦を思わせるし、横たわった巨大な龍(おそらくアトムスク?)は『龍の歯医者』っぽい。腐り落ちた身体が彼女にまとわりつき、自身がロボットと化しアイロンと戦う場面はなかなか新鮮で良い。
さて、一歩間違えばアンチ化してしまう「もう、ギリギリじゃんかよ。」な精神状態で観始めた『プログレ』だが、第1話がすんなり許容できてしまった理由。それは明快で、「ハル子の出番がほとんどない」からだろう。これは大きい。
彼女が登場しないことで、あの世界観を舞台にした「別の物語」であると印象づけられた。ただし2話目以降でハル子の登場が増え、この印象が覆る可能性は大いにある。とはいえ、ハル子がマバセ市を去った後にも頭をギターで殴られるかわいそうな少年がいて、ナオ太以外にも思春期に悩む少女がいたというのを、映像で見せられてそれほど嫌ではなかったのは自分でも意外だった。
また、鶴巻監督が小学生の視点を通し描いたナオ太の物語が、どうやら今回は踏襲されないようだと分かったのも安堵につながった。おそらく新キャラの男の子・イデは、設定的に前作のナオ太(もしくはナオ太と出会う前のアマラオ)のような立ち位置だ。ハル子はイデのN/Oを利用し、アトムスクにアプローチを試みていると思われる。だがイデとその友人らの振る舞いがいかにもバカっぽいものとして徹底的にギャグとして扱われていることからも、作り手が彼の悩みをナオ太同様に主観的切実な物語として扱う意識に希薄であることが伺える。いや、今後多少の掘り下げはあるのだろうけれど。どうやら彼はヒドミの物語の装飾としての役割が大きそうである。
ところで、「自分には何もない」と思っている女の子が、アバンのイメージによればどうやらロボット化する因子を持っているらしいというのは、ちょっと『トップ2』らしいモチーフな気がする。お手伝いさんとしてやってきたジンユがひたすら皿を割っていたのは、露骨な『トップ2』オマージュ。
あまりアニメに精通していなそうな脚本の岩井氏からは出てこなそうな要素だが、誰の案なのだろう。『フリクリ(無印)』はオーディオコメンタリーや関連書籍での対談、インタビューが豊富で、作中の小ネタが事細かに解説されていたので、本作もそれにならって制作秘話をどこかで事細かに解説してほしい。
余談。iTunesは字幕機能(英語字幕だけど)が付いててありがてえ。聞き取りが不安だったが、英語教師の早口シーンのニュアンスがつかめなかったくらいで、ストーリーを理解する分には特に問題なくてひとあんしん。ただ台詞回しの面白さみたいなものは日本語版で観ないと判断できないので保留。