〔冒険者になるまでのちょっとした経緯〕
それはあまり知られていない国だった。
プトレの更におく、標高が上がり若干寒くなった荒涼な大地にある、地方王国。
ウェルド王国からは遠すぎ、シン大陸ははるか遠い大地と思いを馳せる場所。
魔術が主に発達し、王家の血筋は魔力の多さで力関係が変動する珍妙な国。
ジュルフ・ジャリーディーはその国の王女の王配候補であった。
逃げた。
だってめちゃくちゃワガママだし。
王家の血筋になるとかすごいやだし。
兄弟4人いるから他のやつがなんとかしてくれ。
氷の術に長けたジュルフは、王室的にはなかなかいいあんばいだったらしいのだが。
ところで、身につけていた魔法具などはすべて税関で没収された。
なんかセイレイ様がお怒りになるかもしれないとかで。
まあいいんだけど、杖の一本くらい持たせてくれたっていいしょや!!!
換金できる硬貨も少なく、お小遣いちょっとで放り出されたようなもん。
そんな彼の目に止まったのが酔狂なお嬢様のパーティ募集張り紙だった。
これが、ジュルフ・ジャリーディーの、ごくごくちょっとした冒険者になった経緯である。