声を上げはしなかったのだけれど涙が止まらなくなったのはスパイダーバースの最終戦でのキングピン。あいつ悪い奴で非道いことをしているのだけれどそれはそれとして平行世界の家族が無限に出てきて全部決して自分の元に取り戻せないっていう超演出
どでかい科学機械を作りあげたおかげで無限のバリエーション世界に手が届き、何通りもの様々なスパイダーマンもやってくる。
でも、キングピンの元に駆け寄ってきてくれる家族は一組もいないんですよ。どんな世界でも妻と息子は彼から去り、失われてしまう。
失った絆、本質的な過去は改変できないのだ。
これはスパイダーマンたちにとっての取り戻せないけれどそこから先に進むことを選ぶ過去、と対照になっていて、スパイダーマンたちが(暴力のレイヤー上だけでなく)テーマのレイヤーの上でキングピンを破るということの表現になっているのですけれど、この、これ、この「テーマレイヤー上での敵役の敗北」を、何の台詞もなく、映像上だけ、それもほんの数瞬の表現だけで実装しているっていうのが、本当にすごすぎて泣いてしまった。
あんなに鋭く、徹底的にうちのめされる敗北を喫した敵役をすぐには思いつけない。
こんな巧緻、端的、鮮烈な実装ってあるのか?!
本当にすごい表現だった。