ふせったーなる便利なものがあるのを知り、ランスシリーズ完結にあたっての感想、考察という形でシリーズへの思いの丈をぶちまけました。言うまでもなくネタバレ全開なのでランス10未プレイの人は見ないでください!
僕は戦国ランスでこのシリーズにハマって以来、6→5D→マグナム→02→9→01→03の順で遊んできた(配布フリーの鬼畜王もプレイ済み)。RPGのお約束をことごとく打ち破る自由で痛快なシナリオ、最強の英雄だがドスケベで破天荒で底なしに明るい主人公ランス、一見おもちゃ箱をひっくり返したような雑さゆるさだがその実ハードコアで非常によく作りこまれた世界観。新作が出るたびに没頭し、いつしかランスシリーズの完結を見届けることが僕の人生の目標の一つになっていた。
そして最終作のRance Ⅹ -決戦-。世界の王となったランスが人類の存亡を賭けて魔軍との最終決戦に臨むシリーズ総決算の超大作だ。完結にあたって恐らくファンが最も危惧していたのが、果たして人類は本当に救われるのか?だろう。周知の通り、ランス世界は悪趣味な創造神ルドラサウムの創作物に過ぎないのであり、そこに生きるメインプレイヤーたる人類はルドラサウムに娯楽を提供するために苦しみ、絶望することを宿命付けられているのだ。人類の脅威として位置付けられた魔王および魔人はどう足掻いても勝てそうにないほど強大に設定され、例え勝利できたとしても、安息を手に入れたメインプレイヤーはルドラサウムを退屈させることとなり、最後には世界全体がリセットされてしまう。IFである鬼畜王ランスでは魔人ワーグの能力でルドラサウムを百年ほど眠らせるというその場しのぎの解決策がとられるが、ランスⅩでは別の結末となることが明かされており、僕も非常に気になっていた。
それに解決がもたらされたのは本編終了後の第二部であった。魔王となってしまったランスにかわってランスとクルックーの子である「あなた」(エール)が主人公となり、ランスの子を集めて魔王討伐に向かう物語だ。第二部に入って驚くのが作風の大転換である。それまでの非倫理的エロゲ世界とはうってかわって、友情努力勝利、そして愛を説く王道RPG的ストーリーが展開されるのである。あのランスシリーズにおいてだ。13歳になった「あなた」すなわちエールは愛する母のもとを旅立ち、世界をまわって五つのオーブを探し、冒険仲間や兄弟姉妹と出会い、力を合わせ、ときには衝突し、信頼を深めながらともに困難を乗り越えていく。そして最後には人間の心を取り戻した父ランスとともに、数千年にわたって人類を苦しめてきた魔王システムが実体化した災厄「血の記憶」を倒し、世界に平和をもたらすという筋書きだ。しかしこうなってしまうと、平和な世界を嫌うルドラサウムによって世界がリセットされてしまうのではないのか。そんな不安を覚えていたプレイヤーは、やがて驚愕の真実を知ることとなる。
なんと「あなた」(エール)は創造神ルドラサウムの化身だったのだ。クルックーがかつてルドラサウムと謁見した際、ルドラサウムに対して「一人の人間として自分が作った世界を冒険する」娯楽を提案した。それを受けたルドラサウムは記憶をなくした状態でエールと意識を共有(恐らくこの解釈であっていると思う)し、冒険に出た。それが第二部のストーリーである。「あなた」とはプレイヤーではなくルドラサウムを指していたという叙述トリックだったのである。それまで文字通り神の視点で世界を俯瞰してきたルドラサウムは、エールの視点を通じて世界を初めて実際に「体験」し、愛や友情、信頼、挫折、努力、達成感などの楽しさを知った。恐怖や絶望、憎悪、悲しみだけではなく、世界はこんなにも楽しく希望に満ち満ちている。それを知ったルドラサウムはもはや退屈ではなくなっていたのだった。
この結末には本当に驚かされた。創造神を打倒するのではなく(端からそんなこと無理だが)、あなたもこっちへ来て一緒に冒険しようよ!とばかりに仲間にして改心?させてしまう、そんな楽しい方法があるなんて夢にも思わなかった。従来の作風を逆手に取った大転換にしてもランスシリーズだからこそ出来たギミックであり、本当によく考えたものだと思う。ランスシリーズにステレオタイプなRPGへのアンチテーゼとして生まれた側面があることを考えると、第二部はまさに「王道への回帰」といえ興味深い。外道から王道への回帰であるからこそ、こんなにも心が温まり心地よいのである。これには完全にヤラれた。
ところで、今作にはメタフィクション的なメッセージ性がこめられているという意見もあるようだ。作中人物の不幸を喜ぶルドラサウムを作中人物が凌辱されて喜ぶエロゲプレイヤーの比喩とし、やっぱ明るくKENZENなのが一番だよね!というメッセージを込めたとか、そんな内容だろうか。それが事実かどうかはともかく、ゴジラ英霊論や後期クイーン的問題にしてもそうだが、優れた創作物はしばしば作り手の意思を超えたメッセージ性を孕むものだと思う。
それにしても、まさかランスシリーズでこのような安らぎと愛に満ちたエンディングを迎えられるとは、幸福でならない。大げさに聞こえるかもしれないが、僕は作中の「あなた」同様に生きる希望を感じた。このシリーズのファンでいられて本当によかった。
ただ、僕はまだ未練たらたらである。せっかく気持ちのいい青空が広がったというのに、もうあの世界を冒険できないのは残念でならない。そして大好きなランスや、その子供たち(みんないい子ばかり!)、特に主人公のエール!プレイヤーキャラかつ大好きなランスの娘ということで愛しさも一入、大好きになってしまったキャラである。彼らの冒険をもう見ることができないと思うと結構キツいものがある。4のリメイクとかエールクエストとか作ってくれてもいいのよ...!