オイラが戸田奈津子を許せないのは『オブリビオン』のクローンの誤訳だ。作中では一度もクローンとは言わず、それが何者であるかを問うテーマの作品だった。「僕は彼ではない。だが君を愛している」と訳すべきセリフを「私はクローンだ」と意訳した。
この誤訳が原因で、多くの人がクローンだと誤解し、似て非なる者を受け容れるラストに拒絶反応を示した人も多くいた。顔がトムなら別人でもいいのかよとツッコミ入れた者もいた。
また、クローンの成長過程を夢想したというブログも読んだ。
だが、別人ではなかった。この作品にはクローンは出て来ない。
クローンは遺伝子が同じだけの別人であり、双子と同じだが。肉体だけでなく記憶も経験も同じ、完全なる複製だったのだ。異星人のオーバーテクノロジーにより、完全に複製された同一人物なのである。この作品は、完全なる複製のアイデンティティを問う作品だったのだ。だからわざわざ記憶を消す必要があり、この描写によって、クローンではないと説明しているのだ。だが、字幕でクローンと言ってしまっている為、記憶を持つオカルトなクローンという事になり、SF的な設定が破綻した作品だと断罪される原因を作った。
ひどい冤罪である。
この誤訳の酷い所は、単なる単語に止まらず、作品のテーマに関わり、オチに直結する。気付いた者もネタバレになるので、指摘も封殺されて来た。
本人は「誤訳ではない。意訳だ」というだろうが、字が違う。「違訳」と言うのが正しかろう。
彼女には、一刻も早く引退して頂き、彼女の担当した全ての作品の字幕を差し替えたソフトを出して貰いたい。そして、我々に違訳の女王の名をオブリビオンさせて欲しい。